東芝テックの従業員が架空受注からの転売で懲戒解雇、損害額は約2億円か
2025/02/25 労務法務, コンプライアンス, 刑事法, IT

はじめに
東芝テック株式会社は2月18日、国内支社で勤務する従業員1名が8年にわたりパソコンを着服する不正行為を行っていたと発表しました。東芝テック側の損害額は約2億円ということです。
東芝テックは刑事告訴を検討しています。もし刑事告訴した場合、従業員が問われる可能性のある罪についてもみていきます。
約8年不正行為続いたか
電機大手、株式会社東芝の傘下で、オフィス機器などを手がける東芝テック。
自社の国内支社で勤務する従業員1名が架空の受注計上により、私的着服を目的に物品を受領し転売していたと発表しました。
報道によると、従業員は顧客からの注文を装い、パソコンを架空に受注後、転売するという行為を繰り返していたということです。2017年度から約8年間にわたって行われていた不正行為。不正は本人からの自白を受け、社内調査を行った結果、2024年12月に判明しました。損害額は約2億円に上るといいます。
従業員は2月18日付で懲戒解雇処分を下されたとのことです。
再発防止について東芝テックは、「業務プロセスの見直しやコンプライアンス教育など内部管理体制の一層の強化に努める」としています。また、刑事告訴については現在検討中とのことです。
刑事告訴をした場合に問われる可能性がある罪
東芝テックは現在、「刑事告訴を検討中」としています。今回のケースでは以下の法律が適用される可能性があります。
(1)業務上横領罪
「業務上自己の占有する他人の物を横領すること」を指します。企業の資産、今回であればパソコンを業務上の立場を利用して不正に取得し、私的に流用していました。そのため業務上横領罪に該当する可能性があります。
罰則:10年以下の懲役
(2)背任罪
もし従業員が管理職や役員だった場合、背任罪が成立する可能性があります。背任罪とは、他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図り、または本人に損害を加える目的で任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を与える犯罪を指します。また背任罪は委任された業務を独立して遂行する者に限らず、補助者や代行者として事務を担当する者にも背任罪が適用される可能性があると考えられています。
罰則:5年以下の懲役または50万円以下の罰金
刑事告訴を行う場合、会社側の人的コストも大きくなります。東芝テックのケースであれば、当該従業員に関わった上司や同僚らが捜査機関から事情聴取を受ける可能性が高いと考えられます。そのために業務が一時的に滞ってしまうことも考えられます。
一方で、企業として株主への説明責任を果たすうえでも、加害者にしかるべき刑事処分を求め、捜査に協力することは必要といえます。
厳正な対処を行うことで、他の従業員に対しても、不正行為を抑止する効果が期待できます。
コメント
今回の不正行為に対しては、東芝テックの内部統制の欠陥を指摘する声も上がっています。
しかし、この種の従業員による不正行為は後を絶ちません。昨年10月には、ダイハツのサイト保守業務で架空発注を繰り返し、約1億6000万円を詐取したとして、トヨタ子会社の元社員らが詐欺の疑いで逮捕されています。さらに、同年2月には法人クレジットカードを用いた使い込みがあったとして、ホンダの元社員が背任容疑で逮捕されています。
このような不正行為は、特に、資金の動きが活発な分野で行われやすくなります。さらに、会社の規模が大きくなると、従業員の多さ・資金の出入りの多さなどから一層管理が難しくなります。不自然なお金の動きがないか、定期的にモニタリングすることが重要です。
そのうえで、資金管理者の限定や社内コンプライアンスセミナーを通じた横領等の違法性の周知も、不正防止や早期発見の観点で効果的です。
これを機会に、各社、それぞれの状況に応じた不正行為対策を講じてみてはいかがでしょうか。
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