「バーチャル株主総会」を法制審に諮問、会社法改正の動き
2025/02/05 商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに
鈴木法務大臣は4日、会社法が規定する株主総会の在り方の見直しを、10日開催予定の法制審議会に諮問すると発表しました。バーチャル株主総会開催の要件緩和が盛り込まれているとのことです。今回は株主総会の手続などについて見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、新型コロナウイルス感染拡大を受けて現在特例で認められているオンラインによる株主総会を法制化し、企業と株主双方の利便性向上を図るため会社法の改正を法制審議会に諮問するとされます。現行法では株主総会の招集にあたり、開催場所は必ず定めなければならず、オンラインのみでの開催は認められておりません。会場での開催に加えオンラインも併用する、いわゆるハイブリッド型のみが認められております。これを正式に制度化する方向で検討されているとのことです。また今回の法制審では株主名簿に載らないものの株主総会で事実上の議決権を有する「実質株主」について、株式会社がその情報を確認することができるようにする制度の創設も検討されております。
株主総会の招集
株主総会には定時株主総会と臨時株主総会がありますが、原則として株主総会は取締役が招集します(会社法296条3項)。取締役会設置会社の場合は取締役会決議に基づいて代表取締役が招集することとなります(最判昭和45年8月20日)。取締役会非設置会社の場合は取締役の過半数によって決定し、代表取締役が招集します。このように原則として取締役に招集権限が付与されておりますが、一定の場合には株主も招集することが可能です。総株主の議決権の3%以上を保有(公開会社は6ヶ月前から引き続き)している株主は、取締役に対し目的と理由を示して招集請求することが可能です(297条1項)。請求後遅滞なく招集手続が行われない場合、または請求があった日から8週間以内の日を開催日とする招集通知が発せられない場合は裁判所の許可を得て株主自身が招集できます(同条4項1号、2号)。
株主総会の招集手続き
上記のように株主総会は取締役と一部の株主が招集することができます。具体的な手続きとしてはまず、(1)開催日時と場所、(2)株主総会の目的事項、(3)書面投票・電子投票を認める場合はその旨、(4)その他法務省令で定める事項を決定します(298条1項、4項)。招集通知は公開会社では開催日の2週間前まで、非公開会社では1週間前までに発送する必要があります(299条1項)。取締役会非設置会社の場合は定款でさらに短縮することが可能です。なお招集通知の方法は、取締役会設置会社または書面・電子投票を認める場合は書面または電磁的方法でする必要がありますが、取締役会非設置会社では制限はありません。またこれらの招集手続きは株主全員が同意する場合は省略することができます(300条)。
株主総会の開催場所
株主総会の開催場所については特に制限はありませんが、過去に開催した場所と著しく離れた場所であるといった場合には、その場所で開催する理由を株主に説明する必用があります(会社法施行規則63条2項)。なおこの場合も株主全員の同意がある場合は理由の説明は不要です。このように株主総会を招集するには物理的に必ず開催場所を決定する必用があり、その上でインターネットによる参加も可能とする、いわゆる「ハイブリッド型バーチャル総会」も可能となっております。会社法上は具体的な場所を定めずにオンラインのみの開催は現行法上は認められないということです。そこでコロナ禍から2021年施行の改正産業競争力強化法によって、一定の要件の下オンラインのみの開催が認められております。具体的には(1)上場会社であること、(2)経産大臣・法務大臣の確認を受けたこと、(3)オンライン開催ができる旨の定款規定を置いていること、(4)招集決定時に省令の要件に該当していることとなっております。
コメント
以上のように現行会社法では株主総会の開催地を決定することが義務付けられており、現地とオンラインのハイブリッド総会は可能ですが、完全オンラインの総会はできないこととなっております。一部の上場会社のみ別の法律によって特定的に認められてはいるものの、それ以外の会社では利用できません。そこで法相は会社法を改正し、制度的にオンライン総会を可能とするため法制審議会で諮問します。通信障害が起きた場合の決議取り消しのリスク低減についても規定するとされます。実現した場合は定時総会等の開催コストが軽減され、また機動的な意思決定も期待できます。これら法改正の動きに注視しつつ、現行法での手続を今一度確認して周知しておくことが重要と言えるでしょう。
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