公取委が独禁法の適否検討を本格化、「ダークパターン」とは
2025/01/22   コンプライアンス, 独禁法対応, 独占禁止法

はじめに

 通販サイトなどで消費者の判断を謝らせるような作りにする、いわゆる「ダークパターン」について、独禁法で規制することができるのか、公取委が研究調査を本格化させることがわかりました。今回はダークパターンと独禁法のぎまん的顧客誘引について見ていきます。

 

事案の概要

 読売新聞の報道によりますと、公正取引委員会は消費者の選択をゆがめ、公正な市場競争を妨げる恐れがあるとの観点で、ダークパターンについて独禁法が適用できるのか、また独禁法で効果的に規制ができるのかの調査を本格化させるとのことです。これまで自社サービスを著しく優良であると見せかけて不当に誘導する行為は独禁法の「ぎまん的顧客誘引」で規制されてきたとされます。しかしダークパターンの中には、定額制サービスなどで解約手続を煩雑にするといった行為などに対しては独禁法の適用は難しく独禁法で対応できる範囲を早急に見極める必要があるとのことです。これを受け公取委の調査研究機関である「競争政策研究センター」は3月にダークパターンに関する専門家の国際会議を開催する予定とされます。

 

ダークパターン

 消費者庁のHPによりますと、ダークパターンとは一般的に、消費者が気付かない間に不利な判断・意思決定をしてしまうよう誘導する仕組みのウェブデザインなどを指すとされております。たとえば「残り◯分」などとあたかもその後の短期間のみに適用されるお得な取引条件であるかのように表示しているものの、実際には期間経過後も同じ条件が適用されるといったものです。これいがいにも、「サービスを利用するには通知を許可してください」との表示に「はい」「あとで回答」と拒否する選択肢がない表示が執拗に出るとったものや、「退会を希望の方は以下の電話番号でのみ受け付けています」といった解約に手間をかけさせえる、あるいは解約・解除の手続が煩雑なもの、「今なら通常価格¥2980→¥1490」との表示の端に小さく「最低3回の定期購入が必要です」と記載されたものなどが挙げられます。いずれも消費者の公正で自由な意思決定を阻害する表示とされております。

 

ダークパターンと法規制

 上記のようなダークパターンの中には有利誤認表示や優良誤認表示といった景表法の不当表示に該当し、景表法で規制されるものもあります。景表法は一般消費者保護を目的としており、事業者が不当な表示をして一般消費者の合理的な意思決定を阻害することを防止しております。それでは一般消費者が対象ではない場合、たとえば企業間など事業者が対象となっている場合は規制できないのでしょうか。このような場合は景表法ではなく独禁法のぎまん的顧客誘引や不当な利益による顧客誘引で規制されます。つまり独禁法が一般的な規制を行い、消費者を対象としている場合により細かな規定を置いて規制しているのが景表法ということです。このように基本的には景表法や独禁法によってダークパターンが規制されます。

 

ぎまん的顧客誘引とは

 ここでぎまん的顧客誘引とは、「自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事業について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること」とされとります(一般指定8項)。上でも触れたように要件はほぼ景表法の優良誤認・有利誤認表示と同じですが誘引の対象を「顧客」としております。実際にこの規定が適用された事例としては破綻することを告げずに高収入が得られるかのように勧誘したマルチ商法(東京高裁平成5年3月29日)があります。また仕入先やロイヤルティの算定方法などについて十分に説明せず勧誘したフランチャイズの募集なども該当すると言われております。このように競争手段の不公正さがぎまん的顧客誘引の不当性とされております。

 

コメント

 以上のようにウェブサイト上でしばしば見られるダークパターンはそのまま景表法や独禁法で規制できうるものもあれば、解約手続きを煩雑にする場合のようにこれらでは規制が難しいものも多数みられます。公取委は近年、巨大IT企業が支配を強めるデジタル市場の監視を強めており、これら巨大IT企業がダークパターンを駆使することによって競合他社が太刀打ち出来なくなる事態を懸念していると言われております。今後このようなダークパターンに対応すべく景表法や独禁法などの法改正も視野に当局が検討を進めていくものと予想されます。自社のHPや顧客とのウェブサイト上での契約等の表示がこれらダークパターンと呼ばれる手法に該当していないか、今一度見直して社内で周知することが重要と言えるでしょう。

 

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