公取委がアマゾンジャパンに立入検査、拘束条件付取引とは
2024/11/27 契約法務, コンプライアンス, 独禁法対応, 独占禁止法, IT

はじめに
公正取引委員会が26日、インターネット通販大手「アマゾンジャパン」に対して独禁法違反の疑いで立入検査を行っていたことがわかりました。価格の引き下げなどを強制していた疑いがあるとのことです。今回は独禁法の拘束条件付取引を見直していいきます。
事案の概要
報道などによりますと、Amazonでは同社以外が商品を販売する「マーケットプレイス」で、同一の商品を複数の業者が出品している場合、より目立つ位置に特定の業者を表示する「カートボックス」と呼ばれる仕組みを提供しているとされます。同社はこのカートボックスに掲載されるための条件の1つとして、「競争力のある価格での出品」というものを設定しており、また在庫管理や発送等を同社が代行するサービスを利用することで、カートボックスの掲載で有利に扱うという取り扱いをしているとのことです。このようにマーケットプレイスに出品する業者に価格の引き下げや同社サービスの利用を事実上強制しており、独禁法の拘束条件付取引や優越的地位の濫用に当たる疑いがあるとして公取委が立入検査を行いました。
拘束条件付取引とは
独禁法では取引の相手方の事業活動を不当に拘束する行為を禁止しております。2条9項4号では再販売価格の拘束を、2条9項6号ニの規定を受けて定められている一般指定11項では排他条件付取引を規定しております。そしてそれら以外の取引相手の事業活動を拘束する行為として拘束条件付取引を規定しております。一般指定12項では「相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、相手方と取引すること」を禁止しております。具体例としては販売地域を制限する、いわゆるテリトリー制や、販売先を制限する帳合取引、広告制限など販売方法の制限なども挙げられます。取引の相手方との契約に条件を盛り込むkとは契約自由の原則から本来は自由と言えますが、公正な競争秩序を阻害し、不当である場合は違法となります。
拘束条件付取引の行為要件
拘束条件付取引は再販売価格の拘束や排他条件付取引以外で取引相手を拘束する条件を付けて取引を行い場合に成立します。自己が販売する製品をそのまま小売業者等に価格設定を拘束する条件を付して販売する場合は再販売価格の拘束に当たりますが、加工して別の製品として販売する場合やその製品を使用して別の役務を提供する場合に拘束条件付取引に当たることとなります。また他の競争者と取引しないことを条件として取引する場合は排他条件付取引となりますが、安売りを行う業者に流さないことを条件とする場合には拘束条件付取引の方が適用されます。メーカーが卸売業者に対して特定の小売業者としか取引できないようにするといった場合も該当することとなります。
公正競争阻害性
一般指定12項は、相手方の事業活動を「不当に」拘束する条件を付けて取引する場合に拘束条件付取引に該当するとしております。つまり原則として適法であるが、「不当」である場合にのみ違法となるということです。この「不当」とは公正競争阻害性とも言われ、その内容は自由競争の減殺と競争の回避とされております。行為の形態や拘束の程度などに応じて判断されるとされております。(最判平成10年12月18日)。さらにその判断に際しては、対象商品のブランド間競争やブランド内競争の状況等が考慮されるとされております。つまり拘束条件付取引の場合は、公正競争阻害性はその行為累計ごとに判断基準も異なってくるということです。なお市場に及ぼす効果が競争の減殺や回避を超えて、競争の実質的制限にまで至る場合は、不当な取引制限(2条6項)や私的独占(2条5項)に該当し得ることとなります。
はじめに
本件でアマゾンは有利な位置に表示される、いわゆるカートボックスに掲載されるための条件として競争力のある価格での出品や同社の代行サービスの利用を設定していたとされます。これにより価格の引き下げや同社サービスの利用を強いられる可能性があり、相手方の事業活動を拘束する条件を付した取引と判断される可能性があると言えます。以上のように、独禁法では不当に相手方の事業活動を制限する取引を禁止しております。相手方に価格や他社との取引、その他販売方法等に条件を付ける場合はこれらの規定に抵触する可能性があると言えます。自社の取引相手に何等かの条件を受け入れてもらっている場合は、これらの規制に該当していないかを今一度見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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