福祉法人理事長の変更で4人を贈収賄容疑で逮捕、理事会開かず選定か
2024/10/25   商事法務, コンプライアンス, 会社法

はじめに


三重県にある社会福祉法人「かがやき福祉会」。同法人の役員を変更する見返りに3500万円を受け取ったとして、10月16日、元理事長で会社役員の男(58)と会社員の女(61)が社会福祉法違反(収賄)の疑いで逮捕されました。

 

理事長変更の見返りで3500万渡した疑い


報道などによりますと、今回逮捕されたのは、三重県鈴鹿市の社会福祉法人「かがやき福祉会」の元理事長の男Aと会社員の女Dです。両名は、かがやき福祉会の役員(理事長を含む)を変更する見返りとして、合わせて3500万円を受け取った社会福祉法違反(収賄)の疑いが持たれています。

また警察は同日、同じく社会福祉法違反(贈賄)の容疑で無職の男B(44)と不動産管理業を営む男C(52)を再逮捕しています。この2人は今年9月、かがやき福祉会の資金500万円を着服した疑いで逮捕され、10月16日に業務上横領の罪で起訴されていました。

2022年2月当時、男Aはかがやき福祉会の理事長を務めており、女Dも法人運営に関与していたといいます。2人は男Bから、「男Cを後任理事長に変更するように」という話を持ちかけられ、その見返りとして3500万円を受け取った疑いが持たれています。

その後、かがやき福祉会では、実際に男Cが理事長に就任しましたが、変更にあたって男Aは理事会などを開催していなかったとみられています。

また、男Cは就任後数ヶ月で理事長を退任し、男Aが再び就任していたということです。

警察は2023年12月、法人のある鈴鹿市から“かがやき福祉会に使途不明金がある”とする相談を受けていたということです。この相談を受けて捜査が開始。法人の資金500万円を着服した疑いで、今年9月25日に男Bと男Cを逮捕していました。
この2人に関しては、同年8月に静岡市にある別の社会福祉法人から約7400万円を着服したなどとして業務上横領などの罪で執行猶予付きの有罪判決を受けています。

また、かがやき福祉会は今年3月、津地方裁判所から破産手続き開始決定を受けたと報じられています。男Cがかがやき福祉会の理事長に就任後、法人から約1800万円の貸付を受けていたとみられますが、そのうち750万円ほどが返済されず、法人が経営破綻した一因となった可能性があるとされています。

 

社会福祉法では違反行為に罰則も


社会福祉法上、理事・監事・会計監査⼈などは善管注意義務や忠実義務を負っています。そのため、理事が、「特定の⼈物を理事⻑に選任するよう」請託を受けて⾦銭を受け取るなどして、不適正な⼈物を理事⻑に選任し、その結果、社会福祉法⼈などに損害を⽣じさせた場合、善管注意義務や忠実義務に違反したとして、損害賠償責任を負う可能性があります。

また、理事が、理事や理事⻑の選任に関し、「法令等が定める選任⼿続を適正に踏まずに選任してほしい」旨の依頼を受け、その対価として⾦銭を得た場合などは、社会福祉法第156条違反として、5年以下の懲役⼜は500万円以下の罰⾦を科されるおそれがあります。

一方で、理事等に利益を供与し、またはその申込み・約束をした者については、罰則として3年以下の懲役⼜は300万円以下の罰⾦に処されます(同条第2項)。

 

コメント


今回の事件は、社会福祉法人における理事長選任が、適正な手続きを欠いたうえ、金銭の授受によって不正に行われたことが問題視されています。

法人役員にも善管注意義務があり、これを怠ることで法人に多大な損害を与えるリスクがあります。法令遵守と経営の透明化が極めて重要だということを再認識する必要があります。

 

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