ヨギボー店長が盗撮容疑で逮捕/従業員による職場内盗撮への対応策
2024/03/04   コンプライアンス, 危機管理, 刑事法

はじめに


2月20日、SNSでの暴露がきっかけで、ビーズソファ「Yogibo」の販売店元店長が女性従業員の盗撮容疑で逮捕されていたことが発覚し(昨年11月)、騒動となりました。元店長は、スマートフォンで女性従業員の着替えを盗撮していたとされています。

機器の普及と技術向上により、容易となりつつある盗撮犯罪。直近でも、看護師男性が女性患者を手術中に盗撮した容疑で逮捕されるなど、職場内での盗撮事例が増加しているといいます。企業は、こうした職場内盗撮にどのように対応すればよいのでしょうか?

 


 

店長が女性従業員の着替えを盗撮


昨年11月、ビーズソファ「Yogibo」の製造・販売を手掛ける株式会社Yogiboの販売店元店長が、アルバイトの女性従業員の着替えの様子を盗撮した疑いで逮捕されました。

盗撮した動画には女性従業員の着替えの様子が撮影されており、その映像の前には元店長が店舗バックヤードに侵入し、撮影用にスマートフォンを仕掛けた後、女性従業員が出勤してきたことに気がついて部屋から出ていく姿や、後日スマートフォンを回収する様子も残されていたといいます。

また、この元店長と別店舗の店長とみられる人物とのLINEのやり取りでは、元店長が女性客の胸や下着を普段から観察していたことや、従業員への女性蔑視発言、従業員の採用にあたっては容姿で合格・不合格を決めていたことなどもわかっています。

一連の不祥事は、暴露系インフルエンサーによりSNSで拡散され、会社側は公式ホームページで謝罪文を公表。
“当社従業員が逮捕されたことを厳粛に受け止める”と陳謝しました。

会社側は、警察からの連絡で昨年11月28日に逮捕の事実を知った後、直ちに被害者である同店アルバイト従業員に謝罪したといいます。さらに、2023年12月1日付けで、盗撮行為を行った元店長を懲戒解雇処分としたということです。

 

盗撮への罰則


近年増加中といわれる職場内盗撮。盗撮を行うと、軽犯罪法、性的姿態撮影等処罰法や、それぞれの都道府県の迷惑防止条例に基づいて刑事罰が下されます。

○軽犯罪法違反
正当な理由なく、人の住居・浴場・更衣場・便所・その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者が処罰の対象となります(軽犯罪法第1条23号)。
自分の目でのぞき見たものだけでなく、カメラやスマートフォンなどを通じて見ることもできるため、盗撮行為も規制の対象となっています。
罰則として、1日以上30日未満の拘留または1000円以上1万円未満の科料が定められています。

○撮影罪
「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」、通称「性的姿態撮影等処罰法」に定められている犯罪類型です。

性的な部位や、その部分を覆う下着、わいせつ行為の様子などを正当な理由がないのに、ひそかに撮影する行為が対象となります。
違反すれば、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられます。

○迷惑防止条例違反
47都道府県のそれぞれの条例で盗撮が規制の対象となっています。

それぞれの自治体により条例の内容は異なりますが、基本的には、「通常衣服で隠されている下着または身体を撮影したり、撮影目的でカメラを差し向けたり、撮影機器を設置するだけでも処罰対象となる」と定められていることが多く見受けられます。

また場所についても、自治体が管理するトイレなどの公共の場所だけでなく、学校や事務所などある一定数の利用者、出入りする人がいる場所での行為も処罰される可能性があります。
法定刑についてもそれぞれ異なりますが、例えば東京都では、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。なお、犯行に常習性があると認められると、上限が引き上げられ、2年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることになります。

 

職場内盗撮への対応策


着替えやトイレなどが盗撮の対象となる可能性が高いため、できればトイレや更衣室の男女共用を止めることから始めるべきとされています。

また、更衣室やトイレに物影となりそうな箇所をできる限り減らす必要があります。そのために、これらのスペースに極力物を置かないことが重要です。盗撮犯罪の中には、雑然としたスペースにこっそりと盗撮用の箱などを設置するケースも少なくないためです。

さらに、夜間・早朝などにカメラ等を設置するケースもあるため、セキュリティシステムなどを活用し、コアタイム以外でのオフィス等への入退室を管理することも有効となります。

こうした対策にも関わらず、職場内盗撮が発生した場合、第一に犯人の特定が重要となります。
被害者の承諾を得たうえで動画を確認し、犯人に繋がる映像が映り込んでいないかをチェックすること、盗撮時刻と従業員行動記録などを照らし合わせて犯人候補を絞り込むこと、そのうえで慎重なヒアリングを行うことなどが必要になります。

なお、今回の事件を受けて、Yogiboは以下の再発防止策を掲げています。

事件以降、盗撮行為の発見や防止のために再発防止策を策定。以下の項目を講じるとしています。
・店内環境整備を強化
・エリアマネージャーの臨店頻度の増加
・簡易更衣室の設置
・法令遵守の徹底
・教育研修の実施
・従業員との定期的な面談など


 

コメント


一般的に、単に盗撮行為をしたことが判明しただけでは懲戒解雇事由に該当しないと判断されることが多くありますが、逮捕・起訴されると話は別となります。懲戒解雇も視野に、就業規則に基づいて、粛々と適切な処分を下すことになります。

今回の事件では、Yogibo側の素早く適切な対応がSNS上などで高く評価されました。盗撮事件を予防することも重要ですが、事件発覚後にいかに適切かつ迅速な対応がとれるかもポイントになります。

一度、経営トップを含め、社内盗撮対策と発覚後のフロー等について、方針を煮つめておく必要があります。

 

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