ダイハツへの出荷停止指示が解除も、消費者庁より新たな行政指導
2024/01/24 コンプライアンス, 行政対応, 行政法, 公益通報者保護法, 自動車

はじめに
衝突試験などで不正が発覚した自動車メーカー・ダイハツ工業。国土交通省より出荷停止などの指示を受けていましたが、1月19日、当該指示が解除されました。その一方で、消費者庁は同日付で内部通報制度の見直しなどを求める行政指導を行っています。
出荷停止指示解除も課題は山積み
ダイハツ工業株式会社では、昨年4月および5月に車の衝突試験における不正が発覚。さらに、第三者委員会の調査の結果、新たに200件近い不正が発覚するなどしていました。
一連の不正を受け、12月、国土交通省が本社に立入検査を実施し、全ての現行生産車種についての出荷停止の指示が出されました。
その後の1月9日からは、道路運送車両法の定める安全・環境基準への適合有無を確認する検証が行われていました。
検証の結果、試験対象の45車種のうち5車種(トヨタ・プロボックス/マツダ・ファミリア バン、ダイハツ・グランマックス カーゴ/トヨタ・タウンエース バン/マツダ・ボンゴ バン)の安全性などが道路運送車両法の基準に適合することを確認。これを受けて、国土交通省は1月19日、当該5車種の出荷停止指示を解除しました。
ダイハツ工業は今後、出荷・生産再開にあたり、販売会社や関係仕入先と連携しながら、準備を進めるとしていますが、部品の供給面などで取引先との調整が必要で、再開の時期は未定とのことです。
消費者庁からも行政指導
不正の影響は、出荷停止指示にとどまりません。ダイハツ工業は、1月19日、消費者庁から内部通報制度の見直しなどを求める行政指導を受けたことを発表しました。
消費者庁は、一連の問題が外部への通報によって発覚した点を問題視。消費者庁がダイハツ工業における内部通報制度の運用状況を確認したところ、内部通報の体制整備(公益通報者保護法第11条)に不備が認められたといいます。
そのため、以下の指導を行ったとのことです。
(1)内部通報を契機に実施する調査の独立性や客観性の担保、および法律の指針に定める措置の適切な実施
(2)通報者に是正措置の内容を適切に通知すること(匿名の通報時を含む)
(3)内部通報制度の運用や規程の見直しおよび従業員等への周知。さらに、6か月後をめどに運用状況を消費者庁に報告すること
内部通報制度とは
内部通報制度とは、会社などの組織内部で行われる不正行為について、従業員などからの通報を受付・調査・是正する制度です。
消費者庁が実施した実態調査では、不正発見のきっかけとして、「内部通報」が最も多く、「内部監査」を上回る結果となっています。
内部通報制度は、不正発見に大きく貢献するのみならず、同制度を積極的に活用していることが、投資家からの高い評価にも繋がる面があります。
2020年6月の公益通報者保護法の改正により、常時使用する労働者の数が300人以上の企業において、内部通報制度の整備が義務付けられました(300人未満の企業においては努力義務)。このほかにも、公益通報者の保護強化のためのルール変更が行われています。
公益通報者保護法では、義務違反等に対する罰則も設けられており、場合によっては行政処分や刑事罰が科されるおそれがあります。
・内部通報制度を整備していない場合(企業の規模や従業員数を問わない)
→報告徴収、助言、指導、勧告、企業名公表
・報告徴収に応じない、または虚偽の報告をした場合
→20万円以下の過料
・内部通報担当者が公益通報者を特定する事項を漏洩した場合
→30万円以下の罰金(刑事罰)
コメント
行政を巻き込んだ大きな事件となったダイハツ工業の不正問題。通報制度の重要性を改めて痛感する事件となりました。
不正の早期発見のためには、内部通報制度の充実のみならず、外部への通報窓口の設置も推奨されています。
理由としては、社内の受付担当者が経営幹部等の権威に抗うことが難しいケースが考えられるためです。
仮に、外部への通報窓口の設置が難しい場合でも、受付担当者が通報を受け取った際に必ず社外取締役などに報告する体制を作るなど、できるだけ経営幹部の影響力を排除した制度設計を行うことが重要になります。
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