「はま寿司」、営業秘密持ち出し疑いで「かっぱ寿司」に5億円の損害賠償請求 ー東京地裁
2024/01/10 労務法務, コンプライアンス, 訴訟対応, 情報セキュリティ, 不正競争防止法, 外食

はじめに
はま寿司の営業秘密の不正入手で、昨年5月に前社長が有罪判決を受けたカッパ・クリエイト株式会社(かっぱ寿司運営)。この判決を受けて、昨年12月23日、はま寿司の親会社・株式会社ゼンショーホールディングスが、かっぱ寿司の前社長やカッパ・クリエイト社などに対し、5億円の損害賠償等を求める訴訟を東京地方裁判所に提起していたことがわかりました。
はま寿司がかっぱ寿司などを提訴
はま寿司の親会社である、ゼンショーホールディングスは、12月27日、カッパ・クリエイトとその前社長および株式会社コロワイド MDに対して、はま寿司の営業秘密の使用差止め・廃棄と 5 億円の損害賠償を求めて、東京地方裁判所に提訴しました。
一連の営業秘密の不正流出事件は2020年に遡ります。かっぱ寿司の前社長は、ゼンショーホールディングスからカッパ・クリエイトに転職した前後の時期である2020年9月から12月にかけて、「はま寿司」の仕入れ原価や食材使用量などに関するデータをコピーして不正に持ち出し使用した疑いが持たれています。前社長は、不正入手した情報を、カッパ・クリエイト社の仕入れ原価との比較に使用したなどとされています。
前社長は、2022年9月に不正競争防止法違反の疑いで警視庁に逮捕、起訴され、2023年5月に有罪判決を受けました。
はま寿司側は、一連の事件で63億円以上の損害を受けたとしており、今回、その一部である5億円の賠償を求めた形です。
被告に名を連ねたコロワイドMDは、カッパ・クリエイトと同じコロワイドグループにおいて、食品の商品開発や原材料の生産・調達、製造、物流などを担っている会社です。はま寿司側は、不正に入手された情報の一部がコロワイドMD側にも開示されていたことを確認したということです。
なお、はま寿司側が訴訟で請求している内容は以下の通りです。
(1)カッパ・クリエイト前社長、カッパ・クリエイトおよびコロワイド MD に対する、カッパ・クリエ イト前社長が不正に持ち出した営業秘密の使用・開示の差止請求
(2)カッパ・クリエイト前社長、カッパ・クリエイトおよびコロワイド MD に対する、カッパ・クリエ イト前社長が不正に持ち出した営業秘密の廃棄請求
(3)カッパ・クリエイト前社長、カッパ・クリエイトおよびコロワイド MD に対する 5 億円(63 億円 以上の損害金額の一部)の損害賠償請求
刑事では、カッパ・クリエイト前社長に有罪判決
前述のように、刑事裁判では、2023年5月に前社長に対し、懲役3年執行猶予4年・罰金200万円の有罪判決が言い渡されています。
裁判所は「転職先で地位や評価を得たいという利欲的な動機だった」と酌量の余地はないと指摘。その一方で、具体的な損害が確認されていないことから、執行猶予がついた判決となりました。前社長は控訴せず、刑が確定しています。
ちなみに、一連の事件では、カッパ・クリエイトの商品部長や、元はま寿司経営企画部長も逮捕されたほか、法人としてのカッパ・クリエイトも不正競争防止法の両罰規定に基づいて東京地検に書類送検されています。
前社長と同罪で起訴された法人としてのカッパ・クリエイト社と、商品部長だった被告は容疑を否認し、裁判で争っていると報じられています。
コメント
警察庁の発表によると、営業秘密侵害事犯での検挙数は増加傾向にあり、かっぱ寿司の前社長が逮捕された2022年の1年間で全国で29件が摘発されたということです。摘発が増えている背景として、近年の転職市場の活発化に伴う人材の流動化も一因として挙げられています。
場合によっては法人そのものが刑事罰を受けるリスクのある営業秘密の不正利用。退職者に自社のデータを持ち出させないことはもちろんのこと、中途入社者に前職の営業秘密を持ち込ませないための対策を慎重に施す必要があります。
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