中部電力、カルテルをめぐる株主代表訴訟に補助参加
2023/12/28   商事法務, 訴訟対応, 会社法, 民事訴訟法

はじめに
中部電力は26日、関西電力等とカルテルを結んでいたとして公取委から課徴金納付命令を受けた問題で株主から提起されていた株主代表訴訟に補助参加すると発表しました。現在中部電力は公取委による処分の取消訴訟を提起しております。今回は株主代表訴訟の補助参加について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、中部電力は関西電力、九州電力などと顧客を奪い合わないよう申し合わせるなどカルテルを結んでいたとして公取委から各社あわせて1000億円余りの課徴金納付命令を受けました。そのうち中部電力が受けた課徴金は約201億円、中部電力ミライズが約73億円とされます。これを受け同社個人株主4名が現取締役と旧取締役計14名に対して損害賠償を求める株主代表訴訟を提起したとのことです。中部電力は公取委との間で事実認定と法解釈について見解の相違があるとして処分の取消訴訟を提起しており、株主代表訴訟についても原告側の請求には理由がないものとして補助参加すると発表しました。同社は被告側に参加するとされます。
株主代表訴訟と手続
会社の取締役など役員等に法令・定款違反などの任務懈怠があった場合、その責任追及は本来会社が行います。しかし取締役同士の馴れ合いによって適切に責任追及がなされない恐れがあることから一定の要件のもとに株主が会社に代わって訴訟を提起することができます。これが株主代表訴訟です(会社法847条)。原告となる株主は、株式の保有数については1株でよく、公開会社の場合は6ヶ月前から引き続き保有していなければならないとされます。該当する株主は会社に対し責任追求の訴えを提起するよう請求することができます。会社が60日以内に提起しない場合は会社に代わって提起することが可能となります。60日間待っていては会社に回復不可能な損害が生じる場合は提訴請求を経ずに直ちに提起できます(同3項、5項)。なお株主代表訴訟は請求額に関わらず印紙代が一律1万3000円とされます。
訴訟告知と補助参加
株主は株主代表訴訟を提起した場合は、遅滞なく会社に対して訴訟告知をしなければならないとされます(849条3項)。これは本来の提訴権者である会社を訴訟に参加させ、共同当事者となる機会を与えると共に、不当な訴訟追行がなされないように会社に原告株主の訴訟を監視する機会を与えることが趣旨と言われております。それではそもそも会社が被告である取締役側に参加することはできるのでしょうか。この点について判例は、会社は特段の事情が無い限り、取締役を補助するために訴訟に参加することが許されると解するのが相当としております(最判平成13年1月30日)。そして会社法849条3項では、会社が取締役等の側に参加するには、監査役(監査等委員、監査委員)の同意を得なければならないとしております。これもやはり馴れ合いを防ぐことが目的です。
補助参加の効果
補助参加をするに際しては、書面または口頭で参加の趣旨及び理由を明らかにして行うとされます(民事訴訟法43条)。補助参加人は当事者ではないものの、自信の利益のために独立した立場で主張や異議の申立て、控訴・上告などをすることができるとされております(45条1項)。ただし補助参加人はあくまで当事者一方の補助をする立場であることから、被参加人がすでに行うことができなくなった行為や、被参加人の行為と抵触する行為、訴えの取り下げ、請求の放棄、請求の認諾などの行為はできないとされます(同1項ただし書き、2項)。そして判決の効力は原則として当事者にしか及びませんが、補助参加人には特別な効力が及び、参加した側が敗訴した場合は、補助参加人はその後の裁判で争うことができなくなるとされます(46条)。
コメント
中部電力は関西電力などとカルテルを結び、独禁法違反で公取委から課徴金納付命令を受けております。しかし同社はカルテルに関する事実を争っており処分の取り消しを求め提訴しております。また同じ理由で同社役員らを被告とする株主代表訴訟についても理由がないものとして被告側に参加を表明しております。同社監査役全員の同意は得ているとのことです。以上のように株主代表訴訟が提起された場合、訴訟告知がなされ、会社または他の株主は訴訟参加することが可能です。そして本来原告として提訴すべき会社は、被告側に参加することも、監査役の同意を条件に認められております。株主代表訴訟の中には根拠に乏しく、なかば言いがかりに近い訴訟も多く、敗訴のリスクを取締役だけに負担させないことが趣旨とも言われております。役員や取締役会等に責任・違法性は無いと考える場合は、積極的に被告側に参加し会社の判断の正当性を立証していくことも重要と言えるでしょう。
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