「4週間で-20kg」で消費者庁が措置命令、機能性表示食品と優良誤認
2023/12/07   コンプライアンス, 行政対応, 広告法務, 景品表示法

はじめに

 「4週間で-20kg」などとして販売されていた機能性表示食品について、合理的な根拠が認められないとして消費者庁が販売会社に再発防止を命じる措置命令を出していたことがわかりました。会社側は事業を継続するつもりはないとのことです。今回は機能性表示食品と優良誤認表示について見ていきます。

 

事案の概要

 報道などによりますと、健康食品販売会社「アリュール」(品川区)は機能性表示食品「スリムサポ」の販売に際して、同社ウェブサイトで「機能性表示食品 届出番号F956」「1日1回飲むだけで簡単 肥満気味な方の体重・体脂肪 ウエストサイズの減少をサポート 高めのBMIを減らす機能が報告されているサプリメント」「国が痩せると認めたサプリ」などと表示していたとされます。また段々となった腹部の肉をつまむ人物のイラストと細身の人物のイラスト等と共に表示し、あたかも同製品を摂取すれば含まれる成分によって痩身効果が得られるかのように表示していたとのことです。しかし消費者庁に提出された資料はこれらの表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものではなかったとして措置命令が出されました。

 

機能性表示食品とは

 機能性表示食品とは、事業者の責任で、科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示するものとして消費者庁に届け出られた商品を言うとされます。従来は機能性を表示することができる食品としては、国が個別に許可した特定保健用食品(トクホ)と国の規格基準に適合した栄養機能食品に限られておりました。そこで機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者が正しい情報を得て選択できるよう平成27年4月から新しく機能性表示食品の制度が導入されたとのことです。トクホと異なり国が審査した上で許可したものではなく、あくまでも事業者の責任で表示されている食品ではありますが、機能性表示を行うにあたっての科学的根拠や適正な表示による消費者への情報提供は必要とされます。

 

機能性表示の手続き

 製品に機能性表示をするに際しては、事業者が国の定めた一定のルールに基づき安全性や機能性に関する評価を行い、生産・製造、品質の管理体制、健康被害の情報収集体制を整え、商品の販売日の60日前までに消費者庁長官に届け出る必要があります。届け出られた内容は消費者庁のウェブサイトで公開され、商品の安全性や機能性については消費者庁が中心となって販売後の監視を行うとされます。安全性の評価については、今まで広く食べられていたかどうかの食経験、安全性に関する既存情報、動物や人を用いての安全性の試験のいずれかによって評価されます。機能性の評価については、最終製品を用いた臨床試験、最終製品または機能性関与成分に関する文献のいずれかによって評価されるとのことです。どのような科学的根拠に基づいて、どのような人が、どのように摂取すると、どのような機能性があるかを明らかにする必要があるということです。

 

優良誤認表示とは

 優良誤認表示とは、事業者が自己の供給する商品・サービスの取引において、その品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すこと、または事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことを言います(景表法5条1号)。このような表示は一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるとして禁止されております。この優良誤認表示は故意に表示した場合だけでなく、過失によって表示してしまった場合も規制の対象となります。違反した場合は措置命令、および課徴金納付命令の対象となっております(7条、8条)。優良誤認に該当するか否かを判断するため、消費者庁は事業者に対し期間を定めて表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、提出しない場合は優良誤認表示とみなされます(7条2項)。

 

コメント

 本件でアリュールはサプリメントの販売に際して1日1回飲むだけで痩身効果があり、4週間で20kgの減量も可能であるかのように表示しておりました。消費者庁の求めにより提出された資料も表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すことができなかったとされます。また機能性表示の届け出がなされておりましたが、それをもって効果を国が認めたことにはならないとされております。以上のように機能性表示食品はトクホなどと異なり、国の審査や許可は必要ありません。あくまでも事業者の責任で表示するもので、届け出を行っても国のお墨付きが得られるというものではなく、表示の仕方によっては優良誤認表示となるリスクがあると言えます。サプリメント等の販売に際してはこれらの表示規制に該当していないかを今一度慎重に確認しなおすことが重要と言えるでしょう。

 

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