TOHOシネマズ、映画配給会社への圧力疑いで公取委に確約計画提出
2023/10/02   コンプライアンス, 独禁法対応, 独占禁止法, エンターテイメント

はじめに


全国で映画館を展開する「TOHOシネマズ」。公正取引委員会からの調査を受けて、再発防止策を含む自主的な改善計画を公取委に提出したことが報道されました。

 

作品を配給しないよう要求か


公正取引委員会から独禁法違反疑いで調査を受けたとされているのは、TOHOシネマズ株式会社です。全国で70以上の映画館を運営し、観客の来場者数は日本トップシェアであるほか、映画関連商品や軽飲食物の販売などの事業を展開しています。

報道などによりますと、TOHOシネマズは映画配給会社に対して、

・他の映画館運営会社よりも優先的に作品を配給すること
・他社の映画館に配給しないこと

などを求めたとされており、その際、これらの求めに応じなければ今後取引をしない可能性を示唆したとされています。こうした行為により配給元の事業を不当に拘束した疑いがもたれるとして、公正取引委員会は独占禁止法違反の疑いでTOHOシネマズの調査を進めていました。
それを受けて、TOHOシネマズは、こうした要請を今後は行わないこと、再発防止策などを自主的に確約する計画を提出したということです。

一部報道について(TOHOシネマズ)

TOHOシネマズによる配給元への圧力疑惑をめぐっては、2022年にも、TOHOシネマズ株式会社の親会社である東宝株式会社が、公正取引委員会からの調査協力要請を受けたとの報道がされていました。

 

確約手続とは


今回、TOHOシネマズ側が提出した確約手続とはどのような手続きでしょうか。これは、平成30年12月30日に施行された制度で、TPP協定及びTPP11協定の締結に伴い導入されたものです。

排除措置命令や課徴金納付命令といった従来から活用されていた法的措置と比べて、早期是正が図れること、公正取引委員会と事業者との合意に基づいて協調的かつ効率的に問題解決を図れることなどが特徴です。

確約手続は、公正取引委員会が行った調査の結果、独占禁止法違反疑いがあり、確約手続に付すことが適当だと判断した事業者に対し、違反被疑行為の概要や法令の条項などが記載された通知を行うことで開始されます。

確約手続に関する対応方針(公正取引委員会)

通知を受けた事業者は、確約手続を行う場合には、通知を受けた日から60日以内に、違反被疑行為の排除のために実施しようとする措置が記載された“確約計画”を作成した上で“確約認定申請”を行わなければなりません。
(事業者が期間中に申請を行わなければ、通常手続に戻り、公正取引委員会による調査が再開されます。)

確約認定申請を受けた公正取引委員会は、提出された確約計画が、

(1)違反被疑行為を排除するために十分なものであること
(2)確約計画が確実に実施されると見込まれるものであること

という認定要件に適合するか否かのチェックを行い、要件に適合すれば確約計画が認定されます。
認定された場合、排除措置命令や課徴金納付命令は行われません。

逆に、例えば確約措置の内容が違反被疑行為の一部にしか対応していないといったケースでは、認定要件に適合しないと判断され却下されることがあります。却下された場合、やはり、通常手続きに戻り、公正取引委員会による調査が再開されることになります。



確約手続の概要(公正取引委員会)より画像引用

 

コメント


確約手続をめぐっては、今年の4月にも、大手ドラックストアを運営する株式会社ダイコクが納入業者に対し行っていた優越的地位の濫用疑いの行為に関し、確約計画の認定が発表されています。

(令和5年4月6日)株式会社ダイコクから申請があった確約計画の認定について

従来手続きよりも負担が少なく前向きに問題解決に向かえる制度として、今後も積極的な活用が予想される確約手続。その一方で、確約手続通知を受け取ってから60日以内(期間の伸長は不可)の対応が必要となることから、法務をはじめとした対応部署には、かなりのスピード感が求められます。

平時から制度理解に努めると共に、公正取引委員会の調査を受けた段階から、確約手続の準備を始めることが重要になります。

 

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