スマートフォン利用者よ、あなたのGPS情報は密かに収集され続けている。
2011/04/23   コンプライアンス, 情報セキュリティ, 個人情報保護法, その他

米アップル社によるiPhone利用者のGPS情報収集を個人情報保護の観点から考える
米アップルの「iPhone」が、GPSシステムを通じてiPhone利用者のGPS情報を数時間おきに記録し、気づかぬうちに、かつ、定期的に収集しているらしい。
どうやら、これらのデータを基に、外出先のGPS情報に基づく観光情報及び飲食店情報の提供、その他関連する広告の表示などを行うつもりのようだ。
日本において、同様のGPS情報収集作業が行われているのかは、いまだハッキリとはしていないが、もし、同様のことが行われた場合、これが個人情報保護の観点から許されるのかが問題となる。
個人情報の保護に関する法律
個人情報の保護に関する法律、いわゆる個人情報保護法は、その17条で「個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。」と定め、18条で「個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。」と定めている。
簡単に言うと、前者は、①「個人情報は、適法・公正な手段により、かつ情報主体の通知又は同意を得て収集されるべき」という内容であり、後者は、②「個人情報を取得したときは利用目的を通知又は公表しなければならない」という内容である。
アップル社ソフトウェア使用許諾契約
iPhoneのソフトウェア使用許諾契約の4項(b)では、「アップル社は利用者のiPhoneを通じて得た位置情報にしたがって、利用者にサーピスを提供する旨」及び「利用者がiPhoneで位置情報サービスを使用することで、アップル社がiPhone製品やサービスを提供するために位置データを送信・収集・保持・処理・使用する旨」をそれぞれ規定している。
iPhone利用者は、ソフトウェア使用許諾契約を読み飛ばすうちに、知らず知らずのうちに、アップル社によるGPS情報の収集に同意していることになる。
雑感
そもそも、iPhone利用者のGPS情報が「個人情報」に当たるのかという問題があるが、何時何分何秒にどこに居たという情報は、特定の個人を識別することができる情報(個人情報保護法第2条1項)として、「個人情報」にあたるというのが一般的な見解のようである。
そこで、アップル社が利用者のGPS情報を知らず知らずのうちに収集する手法は、「偽りその他不正の手段により個人情報を取得した(個人情報保護法17条)」場合に当たり、違法なのではという問題が出て来る。
しかし、利用者がiPhone購入にあたり、アップル社ソフトウェア使用許諾契約にて、GPS情報の収集に同意している以上、アップル社は、適法公正な手段で利用者の同意を得てGPS情報を収集したと言えるから、これを以て、個人情報保護法違反とすることはできないだろう。
一方で、アップル社は、数時間ごとに利用者のGPS情報を収集していながら、特に、その都度、収集した情報の利用目的を通知するといった運用は行っていないことから、個人情報取得時にその利用目的の通知を行うことを義務付けた個人情報保護法18条違反が懸念される。
この点、アップル社ソフトウェア使用許諾契約で、GPS情報をiPhone製品やサービスの提供のために収集する旨、規定していることから、「あらかじめその利用目的を公表している(同法18条)」場合にあたり、適法であると考える向きもあるが、そのような、ひどく漠然とした利用目的を事前に公表しただけで、好き勝手に個人のGPS情報を収集・利用できるとするのは、個人情報保護の観点から、許されないのではないだろうか。
もしも、アップル社が日本においても、iPhone利用者のGPS情報を収集して行くならば、より詳細な利用目的の公表が必要となると私は考える。アップル社の個人情報保護に対する姿勢が今後問われることになりそうだ。
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 阿久津 透 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/東京弁護士会所属)
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 岡 伸夫
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