ワカメ卸売業者元代表を書類送検、産地偽装に対する法規制
2023/08/28 コンプライアンス, 広告法務, 不正競争防止法, 景品表示法

はじめに
徳島県警が23日、中国産ワカメを徳島県鳴門産と偽って販売していたとして卸売業者「ヤマニフーズ」(徳島市)の元代表を書類送検していたことがわかりました。同社はすでに廃業しているとのことです。今回は産地偽装に対する法規制を見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、ヤマニフーズの元代表は昨年2月、県内の輸入業者から仕入れた中国産湯通し塩蔵ワカメ15キロを「徳島県鳴門産」と書かれたシールを貼ったダンボール箱に入れて産地を偽装し、東京の卸売業者に仕入れ価格の2倍位上にあたる1万1340円で販売するなどした疑いがもたれております。この事件を巡っては、昨年11月29日に農水省が管轄する機関が抜き打ち検査を行い不正が発覚したとして、県が警察に刑事告発し、家宅捜査が行われたとされます。県などの調べでは、元代表はこれまで6000キロを超える中国産ワカメを鳴門産と偽って販売していたとのことです。同社が創業した2006年頃から行っていたとされます。
食品表示法による規制
食品の産地偽装についてはまず食品表示法による規制に抵触することとなります。食品表示法5条では、食品関連事業者等は、食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売をしてはならないとしております。そして食品表示基準(内閣府令)では、一般用加工食品、業務用加工食品、一般用生鮮食品、業務用生鮮食品のそれぞれについて名称や保存方法、消費期限、原材料名、添加物、内容量、栄養成分などに加え、原料原産地名の適切な表示が求められております。違反に対しては、内閣総理大臣または農水大臣は適切な表示をするよう指示や命令、公表を行います(6条1項、5項、6項、7条)。また罰則として2年以下の懲役または200万円以下の罰金が定められており(19条)、適格消費者団体による差止請求も規定されております(11条)。
不正競争防止法による規制
不正競争防止法2条1項20号では、「商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示…」を不正競争の1つとしております。このような原産地の誤認惹起行為により営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある者は差止請求をすることができ(3条1項)、損害賠償請求も可能です(4条1項)。また罰則として5年以下の懲役、500万円以下の罰金、またはこれらの併科が規定されており(21条2項1号)、法人についても3億円以下の罰金となっております(22条1項3号)。
景表法による規制
産地偽装についてはさらに景表法による規制にも抵触する可能性があります。これまでにも何度も取り上げてきましたが、景表法5条1号では、「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある」表示を優良誤認表示として禁止しております。この優良誤認表示に対しては、内閣総理大臣は事業者に対し、差止やその他必要な事項を命じる措置命令を出すことができ(7条1項)、また課徴金納付命令の対象ともなっております(8条1項)。
コメント
本件でヤマニフーズは輸入業者から仕入れた中国産ワカメを徳島県鳴門産と表示して東京の卸売業者に販売していたとされます。これにより徳島県警は食品表示法違反および不正競争防止法違反の容疑で書類送検しました。起訴を求める厳重処分の意見付きとされます。以上のように食品等の産地偽装では食品表示法や不正競争防止法、景表法に抵触する可能性があります。本件では事業者向けであったことから食品表示法と不正競争防止法違反容疑となりましたが、一般消費者向けであった場合は景表法違反ともなりえます。日本国内では、品目にもよりますが、一般的に外国産よりも国産のほうが品質などの信頼性が高く、顧客誘引力が高いと言えます。そのため外国産を国産と偽ることによって安易に利益を上げることが可能となります。しかし上記のように産地偽装には厳しい法規制が設けられており罰則も重いものなっております。今一度社内で周知していくことが重要と言えるでしょう。
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