「四谷大塚」の元塾講師、教え子児童盗撮で逮捕/日本版DBSの検討
2023/08/24 労務法務, 危機管理, 労働法全般, 刑事法, 教育、学習支援

はじめに
女子児童を盗撮したのは、その児童が通う塾の講師でした。8月19日、中学受験塾大手「四谷大塚」で講師として勤務していた24歳の男は、女子児童に猥褻な内容を言わせるなどした姿をスマートフォンで盗撮したとして、強要や都の迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。
“性的欲求満たすため”教え子盗撮
報道などによりますと、男は塾の校舎内で、教え子だった9歳の女子児童を下着が露出する状態で床に体育座りさせ、スマートフォンで下着を盗撮した上、猥褻な発言を強要したといいます。
男はスマートフォンを自分の胸ポケットに入れて盗撮し、動画をSNSのグループチャットに投稿したとみられていて、動画がSNS上で出回っていることに気がついた母親が警察に相談し、事件が発覚しています。
警察の調べに対し男は「動画を見て性的欲求を満たすためだった。脅したり危害を加えたりするつもりはなかった」と話しているということです。警察は、盗撮の被害にあった当日に女子児童は授業がなかったにもかかわらず、男は「指導」を名目に親に連絡し、児童を教室に呼び出していることから、計画的な犯行とみて調べを進めています。
逮捕前の任意聴取で、男は、「今回の被害児童以外にも、十数人にのぼる女子児童を盗撮し、SNSに動画投稿を行った」と話しているそうで、余罪が疑われています。
会社の対応
男が勤務していた株式会社四谷大塚は、8⽉10⽇に男が業務中に⽣徒を盗撮し、メッセンジャーアプリ内の 10 数名の限定グループにそれらの投稿している事実を把握。当日付で「懲戒解雇」処分を行なったほか、警察へ通報したということです。
また、再発防止策として、全校舎・教室に「家庭からの教室内ライブモニタリンクシステム」を開発、設置することを発表しました。このシステムでは、授業の様子を保護者がスマホなどを使って、リアルタイムに確認できるようになるということです。四谷大塚によれば、こうしたシステムを導入するのは塾業界では初めてだということです。
さらに、システムが設置完了するまでの数ヶ月間は、授業中に講師1人と生徒の密室状態を避けるため、サブチューターを1人教室内に常駐させるとしています。
このほかにも、講師やスタッフはスマートフォンなどの写真・動画が撮影可能な機器類の教室内への持ち込みを厳禁とするほか、個人情報へのアクセスは校舎責任者及びそれに準ずる者に制限すること。採用に関してはこれまで以上に慎重、厳格に面接を行うとしています。
日本版DBS
こうした中、こども家庭庁は、子どもと接する職場で働く人に性犯罪歴がないことを確認する新たな仕組み「日本版DBS」の導入に向けて、6月27日より複数回にわたって有識者会議を開催しています。
DBSは、イギリスで2012年に設立された政府部局で、「Disclosure and Barring Service(前歴開示・前歴者就業制限機構)」と呼ばれるものです。DBSでは、警察記録を検索し、各事業者からの犯罪記録チェックのリクエスト処理や無犯罪証明書の発行を行っています。
イギリスでは、学校・保育施設等の子ども関連施設・事業者に対し、教育水準監査局=準政府機関への登録が義務化されていますが、子ども関連業務に就くことを希望する者は、教育水準監査局にDBSが発行する無犯罪証明書の提出を行わなければなりません。
ちなみに、子ども関連業務に、子どもへの性的虐待などの犯罪歴がある者が従事することは禁じられており、これに違反した場合、雇用者・被用者共に、拘禁刑又は罰金刑又は併科に処せられます。
そのため、イギリスでは使用者が被用者の犯歴照会を求めることができる制度がありますが、子ども関連業務の使用者においては、この犯歴照会を行うことが義務となっています。
日本版DBSでは、イギリスのDBSを参考にするとしていて、使用者が就業希望者に対し、性犯罪歴を登録したシステムで照会を行い、性犯罪歴が確認された場合には、子どもと接する業務に就けない仕組みとする方針だということです。
日本版DBSの利用は、保育所や幼稚園、学校、児童養護施設などで義務づける方向で検討されていますが、塾やスポーツクラブなどの民間事業者は任意での「手挙げ方式」にし、国の審査により一定の要件を満たしたと判断された事業者のみに限定するとしています。また、DBSを利用する事業者向けに認証制度を導入することも検討しているといいます。
コメント
イギリスでの取り組みに類似の制度として、里親を採用する都道府県が里親候補の犯歴情報を照会するものがありますが(児童福祉法上、児童買春を行った者などは里親になれない)、現状、日本には無犯罪証明に関する制度自体はなく、制度のある国での就業や資格取得に関し、就職先や公的機関等から求められた場合に限り、外務省の手続により無犯罪証明書が発行されています。
令和2年度の児童買春事犯の検挙件数は637件、児童ポルノ事犯の検挙件数は2,757件となっており、検挙されていない事件を含むと、相当な数の犯罪に子ども達が巻き込まれていることになります。子どもの心の成長に大きな影を落とす性的虐待。特に子どもへの性的虐待は再犯率が高いとされており、子どもを守る仕組みの構築が急がれます。
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