空港施設の社外監査役が辞任/補欠監査役について
2023/07/06 商事法務, 会社法

はじめに
羽田空港の格納庫など施設運営を手掛ける「空港施設株式会社」(大田区)は3日、社外監査役の芝昭彦氏が同日辞任し、補欠監査役の鈴木啓公氏が後任に就任したと発表しました。同社は6月29日に定時株主総会を開催したばかりとのことです。今回は補欠役員について見ていきます。
事案の概要
空港施設の発表によりますと、7月3日、同社社外取締役である芝氏が一身上の都合により辞任したことにより社外取締役の法定員数を欠くこととなったため、補欠監査役であった鈴木氏が同日付で社外監査役に就任したとされます。鈴木氏は先日開催された同社定時株主総会で補欠監査役として選任されており、社外監査役の要件はみたしているとのことです。同社は監査役会設置会社で監査役は4人、そのうち2人が社外監査役となっており、今回辞任した芝氏も社外監査役であったとされます。また同社の定款では監査役の任期は4年となっており、補欠監査役の任期は退任監査役の任期満了時までと規定されております。
監査役と社外監査役
監査役の設置は原則として任意となっておりますが、一定の場合には会社法で設置が強制されております。まず取締役会設置会社は監査役の設置が必要となってきますが、非公開会社で会計参与を設置している場合は必要ありません。また、会計監査人設置会社も監査役の設置が必要です。しかし監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社である場合は置くことができません(327条2項、3項)。公開会社でかつ大会社である場合は監査役会の設置が義務付けられます(328条1項)。そして監査役会設置会社である場合は監査役が3人以上必要で、そのうち半数以上が社外監査役である必要があります(335条3項)。さらに監査役会設置会社は常勤監査役も選定する必要があります(390条2項2号)。常勤監査役とは会社の営業時間中は会社の監査に専念し、他に常勤の業務を持たない監査役を言います。
社外監査役とは
上記のように監査役会設置会社の場合は、その監査役のうち半数以上は社外監査役であることが求められます。それでは社外監査役とはどのような者を言うのでしょうか。会社法では社外監査役の詳細な要件が定められております(2条16号)。(1)就任前10年間に当該会社または子会社の取締役、会計参与または支配人その他の使用人であったことがないこと、(2)就任前10年以内に当該会社または子会社の監査役であった場合は、その就任前10年間に当該会社または子会社の取締役、会計参与、支配人その他の使用人ではなかったこと、(3)親会社等の取締役、監査役、執行役、支配人、使用人ではないこと、(4)兄弟会社の業務執行取締役等でないこと、(5)当該会社の取締役や支配人その他重要な使用人などの配偶者や二親等内の親族ではないこととなっております。
補欠監査役とは
監査役に限らず、取締役や会計参与などの会社役員が任期の途中で辞任するなどして必要な員数を欠くこととなった場合、原則として臨時株主総会を招集し新たに役員を選任することとなります。上記のように監査役設置会社の場合は監査役が最低3人、そのうち半数以上は社外監査役である必要があります。また取締役会設置会社も同様に取締役が最低3人必要とされ、監査等委員会や指名委員会などの場合はそのうち過半数は社外取締役である必要があります。そこで予期せず役員が欠けた場合に備え、補欠の役員を選任しておくことが可能です。なお任期の途中で役員が欠け、その時点から補欠役員が就任した場合、他の役員とは任期がずれてしまうこととなります。そこで定款で補欠役員の任期を補欠として就任した時から他の役員の任期満了までとし、他の役員と退任時期を合わせることも可能とされます。
コメント
本件で空港施設株式会社の定款によりますと、同社は監査役会設置会社となっており監査役は5名以内と定められております。そして監査役の任期は4年とされ、補欠監査役の任期は退任した監査役の任期満了までとする規定も置かれております。同社では常勤監査役が2名と社外監査役が2名が選任されていたところ、社外監査役の1人が先日辞任したことから、予め選任されていた補欠監査役がその後任として引き継ぐこととなったとされます。任期は辞任した芝氏と同じ日までということです。以上のように会社法では機関や役員の設置、要件、任期などに詳細な規定を置いております。しかし急病や後見開始など予期せぬ事態によって急遽役員を欠く事となる場合もありえます。そこで補欠役員を選任しておくことも可能となっております。これらの規定を今一度確認し、不測の事態に備えておくことが重要と言えるでしょう。
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