フードデリバリー初回割引クーポンの悪用容疑で飲食店経営者逮捕
2023/06/16   刑事法

はじめに


電話やアプリから注文することで、食事を指定の場所に届けてくれるフードデリバリーサービス。コロナ禍で外出が自粛されていたこともあり、利用が大きく広がり、現在も大勢の人がサービスを利用しています。

フードデリバリーサービスとしては、Uber Eatsや出前館などが有名ですが、近年、新たなデリバリーサービスも数多く誕生しています。こうした、新規に立ち上がったデリバリーサービスでは、ユーザーの認知と利用の拡大を目的に、初回利用時に使える割引クーポンを発行することが少なくありません。今回、その初回割引クーポンを悪用した飲食店経営者が逮捕されました。

 

初回割引クーポンで繰り返し注文、100万円超を詐取


山梨県警は14日、山梨県甲府市内で飲食店を経営していた男性を電子計算機使用詐欺容疑で逮捕したと発表しました。

報道などによりますと、逮捕されたのは山梨県甲府市内で飲食店を経営する男性。男の店はフードデリバリーサービスの加盟店でしたが、男は何者かと共謀のうえ、架空の氏名・住所で複数の架空IDを作成し、ユーザーが初回利用時のみ使える割引クーポンを取得。同クーポンを使用して、自身の店に対し500回あまり宅配サービスの架空注文を行ったといいます。

男が加盟していたフードデリバリーサービスでは、初回割引クーポンが使用された場合、デリバリーサービス事業者側が加盟店に売上金を振り込む際に、クーポン割引相当額を全額負担していました。男はこの手口により、500回超のクーポン割引利用額、計104万2000円をだまし取ったとされています。

男の店では、当初、デリバリーサービス事業者側が雇った配達員によって配達を行っていましたが、架空配達の2か月ほど前から、店側が自ら配達をするとしていたということです。山梨県警は、詐欺が発覚しないための対策だったとみています。

デリバリーサービス事業者側は、男の店で新規登録者数の利用が他店よりも異様に多かったことを疑問に感じ、警察に相談。不正が発覚しました。

男は先月、同様の手口で36万円を得たとして既に逮捕されていて、今回が再逮捕となりました。
なお、デリバリーサービスの加盟店がクーポンを悪用し、事業者から金をだまし取る手口の摘発は全国初だということです。

 

電子計算機使用詐欺罪とは


上述のように、今回、男は、電子計算機使用詐欺罪で逮捕されました。電子計算機使用詐欺罪とは、コンピュータやインターネットなどの「電子計算機」を使って行われる詐欺行為を取り締まるものです。詐欺罪が、人を欺いた罪であることに対して、インターネットなど人が使うシステムや機械に対して行われた場合に該当します。例えば、以下のような犯罪行為が挙げられます。

・フィッシング詐欺
・不正なアクセスやハッキングで個人情報や金銭を盗み取る
・メールなどで騙した相手から個人情報などを騙し取る
・窃盗したクレジットでネットショッピングをする

 

構成要件は2点で、
(1)不実の電磁的記録の作出
コンピュータをはじめとする、「人の事務処理に使用する電子計算機」に、虚偽情報または不正指令を与え、預金や電子マネー残高、プリペイドカードの残度数など、“財産の得喪・変更に関連する不実の電磁的記録”を作り出すこと。

(2)または虚偽の電磁的記録の供用
上述した“財産の得喪・変更に関連する不実の電磁的記録”を「他人の事務処理に用いる電子計算機(コンピューター等)」に読み込ませること

(3)上記(1)または(2)によって財産上不法な利益を得たこと

となっています。また、法定刑は詐欺罪と同様、10年以下の懲役となっています。

 

【過去の事例】
■山口県誤振込事件山口県阿武町から誤って振り込まれた給付金4630万円を、誤入金と知りながら、決済代行業者の口座に振り替えるなどした事件で、25歳の男が逮捕されました。男は給付金をオンラインカジノで使ったとされています。裁判所は懲役3年、執行猶予5年の判決を言い渡しました。
 
■旅行サイトでの詐欺事件株式会社リクルートが運営する旅行サイトじゃらん」でおきた事件。2015年、新規アカウント作成者に1000円相当のポイントをプレゼントするキャンペーンを実施したところ、ゲストハウスの経営者らが悪用し、リクルートからポイント分の現金をだまし取り逮捕されました。


 

コメント


新規ユーザー獲得のために提供したクーポン。これまでにも同様の被害は多数報告されているといいます。加盟店やユーザーのモラルに関わるため、デリバリーサービス事業者側がどこまで対策できるのか未知数なところがあります。

デリバリーサービス事業者に限らず、ユーザー拡大のためにクーポンを活用する企業は少なくありません。クーポン設計の際、法務としては、第一に景品表示法の規制が気になるところですが、ユーザーや加盟店等による悪用の可能性とその予防策の検討も合わせて行う必要がありそうです。

 

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