令和4年度の課徴金納付命令額が過去最高に(公取委)
2023/06/05 独禁法対応, 独占禁止法

はじめに
公正取引委員会は、6月1日、「令和4年度における独占禁止法違反事件の処理状況」について公表しました。以下に概要をご紹介します。
過去最大の課徴金額に
公正取引委員会は、企業の「番人」として知られており、国民生活に大きな影響を及ぼす価格カルテル・入札談合・受注調整・中小事業者への不当な優越的地位の濫用・不当廉売などに対し、厳正かつ積極的に対処しています。
2022年度には、独占禁止法の規定に違反すると考えられる事実について、公正取引委員会に寄せられた報告(申告)は約3000件に上りました。
公正取引委員会は不正行為があった場合には取締りを行い、ペナルティとして課徴金を科しています。2022年度に命じられた課徴金の総額は1019億8000万円で、これは過去最高額である2010年度の719億4000万円を大きく上回る結果です。
この課徴金は延べ21名の事業者に対して課され、一事業者当たりの平均課徴金額は48億5662万円となりました。
加えて、公正取引委員会は独占禁止法違反行為について合計29名の事業者に対し、8件の排除措置命令を行っています。その内訳は、価格カルテル1件、その他のカルテル3件、入札談合4件でした。
電力会社への課徴金
課徴金総額が過去最高額を記録する中で、大きな存在感を見せたのが、電力カルテルでした。「カルテル」は、事業者又は業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決める行為で、不当な取引制限として独占禁止法第3条で禁止されています。
関西電力をはじめとする大手電力各社は以下のようなカルテルを形成していたといいます。
(1)中部電力、中部電力ミライズおよび関西電力は、相互に相手方の供給区域において大口顧客獲得のための営業活動を制限
(2)中国電力と関西電力は、相互に相手方の供給区域において相対顧客の獲得のための営業活動を制限。関西電力は中国電力管内での官公庁入札への参加や安値による入札を制限。
(3)九州電力、九電みらいエナジーおよび関西電力は、相互に相手方の供給区域における官公庁入札等で安値による電気料金の提示を制限。
これらのカルテル行為に対して、公正取引委員会は、排除措置命令と課徴金納付命令を行いました。
課せられた課徴金の総額は1010億3399万円にのぼり、中国電力に対しては、707億円の課徴金納付が命じられmさいた。これは、一事業者あたりの課徴金としては最高額でした。ちなみに、中国電力は、この通知を受けて、2023年3月期に707億1500万円の特別損失を計上すると発表しています。
五輪関係者を刑事告訴
公正取引委員会は、平成2年6月に「独占禁止法違反に対する刑事告発に関する公正取引委員会の方針」を公表して以来、悪質かつ重大な違反・繰り返しの違反などを行う事業者に対して、刑事処分を求めて積極的に告発を行っています。
昨今では、東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会の関係者らが逮捕されるという前代未聞の事件が記憶に新しいのではないでしょうか。同事件では、大手広告代理店等6社と同6社で受注業務に従事していた6名、そして、組織委員会大会準備運営第一局次長1名が告発され、現在も裁判が行われています。
コメント
公正取引委員会では、国民生活や中小事業者等の保護を強化すべく、価格カルテルや入札談合、受注調整、優越的地位の濫用や不当廉売などを厳しく取り締まる方針を示しています。
課徴金納付命令額に着目したときに、令和元年が692.7億円、令和4年が1019.8億円と突出している一方、その他の年度では、2.6億円~43.2億円程度と、年度ごとの命令額の差が非常に大きいことがわかります。
市場の大きな領域での違反を注視し、しっかりと準備しながら一気に取り締まるという近年の公正取引委員会の姿勢が見て取れます。
中国電力のように、700億円もの課徴金納付命令を受けてしまうと、経営上のリスクは小さくないものとなります。自社において利益率の高い領域、事業が好調な領域こそ、今まで以上に、独占禁止法関連のコンプライアンスに注力する必要がありそうです。
【関連リンク】
令和4年度における独占禁止法違反事件の処理状況について
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