三郷市の水道談合事件で、元市職員に有罪判決
2023/04/20 コンプライアンス, 刑事法

はじめに
2018年に埼玉県三郷市で発生した水道工事をめぐる談合事件。さいたま地裁は4月17日、同事件に関わったとされる元市職員の男性に対し、懲役1年6月執行猶予3年、追徴金約11万円(求刑・懲役1年6月、追徴金約11万円)の判決を言い渡しました。
事件の経緯
三郷市の発表によりますと、2018年8月に行われた「北部第二配水場機械設備更新等工事」の制限付き一般競争入札に関し、当時、市水道部施設課主幹だった男性(以下「被告男性」)は、特定の業者の社員に対し、入札の秘密事項である予定価格に近い金額を教え、当該業者はその工事を落札。被告男性は謝礼として合計およそ11.5万円相当の飲食接待などを受けたとされています。
その後、2022年12月、被告男性は、官製談合防止法違反及び加重収賄罪の容疑で2022年12月に逮捕・起訴されていました。
逮捕後、被告男性は動機について「係長になって初めて任された大きな入札で、入札をまとめ上げたかった」と話していたとされています。
さいたま地裁は、今回の判決理由の中で、被告男性が入札の根幹に関わる部分を業者側に伝えた上で見返りを受けていた事実を重視、『犯情は甚だ悪質』と指摘しました。さらに、「入札を滞りなく進めたい」という趣旨の犯行動機に対しても、『動機に酌むべき事情はなく、公務員の職務の公正に対する被告人の甘さが招いたもの』と糾弾しました。
その一方で、男性に反省の様子がうかがえることなどから、執行猶予がつけられています。
なお、三郷市は、3月の初公判を受けて、「当市職員がこのような事件を起こしたことは、法を守るべき立場にある公務員としてあるまじき行為であり、市民の皆さまの信頼を著しく失墜させましたことは、誠に遺憾」とコメントを発表。被告男性を3月17日付で懲戒免職としています。
官製談合防止法違反、加重収賄罪とは
「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」、通称、“官製談合防止法”は、国や地方公共団体等の職員が入札談合に関与する、いわゆる官製談合の防止を目的とした法律です。
同法では、職員が入札談合等に関与する行為を禁じており、具体的には、
①談合の明示的な指示
②受注者に関する意向の表明
③発注に係る秘密情報の漏えい
④特定の談合の幇助
の四類型を定めています(法第25項1号ないし4号)。
一方、加重収賄罪は、収賄行為(いわゆる賄賂を受け取る行為)に加えて、公務員の職務違反となる不正行為が行われたときに重い刑事罰を科すものです。刑法197条の3第1項および第2項にて規定されています。不正行為(不作為含む)の対価として、下記の行為を行った場合に適用されます。
・賄賂の収受、要求、約束
・賄賂の第三者への供与
・上記供与の要求・約束をしたとき
今回の三郷市と同様の事例は過去にも発生しています。
<高松市公共下水道事業入札に関する談合事件>
香川県高松市が実施した公共下水道事業入札において、談合により業者間で価格を操作し、不正に入札の勝者を決定するなどの行為が行われたとして、関係者が逮捕されました。罰金100万円の略式命令を受けています。
【参考リンク】
入札談合等関与行為防止法の概要(公正取引委員会)
業者社員も“身分なき共犯”として書類送検
報道などによりますと、今回の事件に関与したとして、被告男性より入札の秘密事項を教えられた業者の社員2名も官製談合防止法違反容疑でさいたま地検に書類送検されたといいます。
埼玉県警は、贈賄容疑については3年の公訴時効が成立している一方、官製談合防止法違反容疑については、「身分なき共犯」にあたると判断したということです。
■身分なき共犯
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・社内の権力関係への隷従
・「指示に従わないと全員の仕事が滞る」という周囲への配慮
・危ない橋を渡ることによる出世や給与アップへの期待
などが動機となるといいます。
コメント
今回の事件を受け、三郷市は、市長の給与を2ヶ月間20%カットすると発表。再発防止のため、コンプライアンス研修を行うなどするとしています。被告男性は、「入札を滞りなく進めたい」という理由で犯行に手を染めたとされていますが、それが事実であれば、業務遂行に対するプレッシャーは相当大きなものだったと想像されます。
過去のコンプライアンス違反の事例を見渡す限り、その大多数が、メンバーが業務上過度なプレッシャーにさらされ、本人の中で法令遵守の優先順位が下がってしまったことを原因としています。メンバーが受けるプレッシャーの大小は、個々人の特性・組織風土・上司や同僚等との関係性などに影響されます。
その意味で、コンプライアンスを本当の意味で徹底させるためには、各部門・チームの業務内容や風土、マネジメント手法などを踏まえ、メンバーが受ける業務上のプレッシャーの大小をアセスメント。そのうえで、部門・チームごとに濃淡をつけた対応を行うことが必要になるかもしれません。
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