空間除菌クレベリン、不当表示で6億円の課徴金納付命令
2023/04/20   広告法務, 景品表示法

はじめに


新型コロナウイルスやインフルエンザの感染対策商品として注目されていた、空間除菌剤「クレベリン」。スティック型とスプレー型、置き型の5つの商品に「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」などの文言を商品パッケージなどに表示し販売していました。

消費者庁は4月11日、これらの表示が、景品表示法第5条1号が禁止する優良誤認表示にあたるとして、販売元の大幸薬品株式会社に対し、課徴金納付命令を発出しました。

 

違反の内容


今回、違反として認定されたのは以下の5つの商品に係る表示です。
1 「クレベリン 置き型 60g」及び「クレベリン 置き型 150g」
2 「クレベリン スティック ペンタイプ」
3 「クレベリン スティック フックタイプ」
4 「クレベリン スプレー」
5 「クレベリン ミニスプレー」

消費者庁によりますと、大幸薬品は2018年9月以降、対象となった5つの商品の商品パッケージなどに、「空間に浮遊するウイルス・菌・ニオイを除去」、「用途 空間のウイルス除去・除菌・消臭にご使用いただけます。」と表示し、あたかも製品から発生する二酸化塩素の作用で室内空間に浮遊するウイルスや菌を除去・除菌する効果があると誤解させる表示をしていたということです。

今回の表示について、消費者庁は、大幸薬品に対し、景品表示法第8条3項の規定にもとづき、期間を定めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めました。

その後、大幸薬品から資料が提出されたものの、ウイルスの除去や除菌をする、といった表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められるものではなかったということです。

景品表示法第8条3項
内閣総理大臣は、第一項の規定による命令(以下「課徴金納付命令」という。)に関し、事業者がした表示が第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示と推定する。


なお、大幸薬品は表示に「◎ご利用環境により成分の広がりは異なります。」、「◎ウイルス・菌・カビ・ニオイのすべてを除去できるものではありません。」などと併記していましたが、消費者庁は「一般消費者が前記の表示から受ける本件5商品の効果に関する認識を打ち消すものではない」としています。

その結果、今回の表示は景品表示法の「優良誤認」にあたるとして、課徴金として6億744万円の支払いを命じました。景品表示法の課徴金としては過去最高額だということです。

 

優良誤認とは


景品表示法における「優良誤認」は、消費者に対して優良な景品や特典が付与されると誤解させるような表示や表現を行う行為を指します。主に以下の3つの類型に分類されます。

(1)商品の価値を過大に誇張して表示する場合:
実際には安価な商品を高級品のように宣伝し、実際の商品の価値を誤認させるような表示をするもの。

(2)特典や景品の内容を不明瞭に表示する場合:
景品の詳細条件や内容を明示せず、あいまいな表現をして、消費者に誤解を与えるような表示をするもの。

(3)無料配布やプレゼントと称して、実際には消費者に負担をかけるような条件を付ける場合
無料配布と謳いながら、実際には高額な商品を購入する必要があるもの。例えば、
・アプリを「無料で利用できる」と宣伝していたものの、実際には高額な有料サービスに加入する必要があることを表示していなかった事例
・店舗で、景品として豪華な海外旅行プレゼントの宣伝していたものの、実際には海外旅行に行くためには高額な商品を購入する必要があることを表示していなかった事例

などが挙げられます。

 

罰則・措置


優良誤認表示を行った事業者に対しては、罰則・措置が科せられます。

・措置命令
違反行為の差止めや再度の違反行為防止に必要な事項またはこれらの実施に関する公示・その他必要な事項を命ずるもの。消費者庁より発出されます。

・課徴金納付命令
優良誤認表示を行い、消費者庁より措置命令を受けた場合、原則として課徴金が課されます。
その金額は、原則、優良誤認表示を行った商品・サービスの売上額に百分の三を乗じて得た額とされています。

・罰金
事業者が措置命令に従わないときには、違反行為者に2年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科されます。また、法人に対しても3億円以下の罰金が科されます。

さらに、措置命令に基づく報告義務に従わないときには、違反行為者および法人に1年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科されます。

 

コメント


優良誤認表示と認定された場合、企業は金銭面でも風評面でも小さくないダメージを負うおそれがあります。そもそもの前提として、「表示の裏付けとなる合理的な根拠」があるのかを現場に丁寧に確認しつつ、消費者庁の示すガイドラインと照らし合わせながら慎重に表示を事前チェックすることが重要になります。
 

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