メタバース上の模倣品規制、政府が法改正案
2023/03/07 知財・ライセンス, 著作権法, 商標法, 不正競争防止法

はじめに
昨今話題となる仮想空間「メタバース」。そこで取引される作品の知的財産を保護するため、経済産業省は、不正競争防止法をはじめとする関連法令に関し、メタバース上でのコピー品製造・販売を禁止する改正案をまとめ、今の通常国会に提出するということです。
メタバースでの法的規制
メタバースは、インターネット上に存在する仮想空間で、メタは「高次・超越」、バースは「宇宙、世界」を意味するユニバースという単語を組み合わせて作られた言葉です。
メタバースは当初、ゲームや音楽イベントといったエンターテインメント領域での活用が目立っていました。しかし、今では医療・介護・教育関連、さらには自治体など、さまざまな分野で利用が広がっています。
メタバース空間には、個々人が「アバター」という分身で参加しますが、そのアバターに着せる服や雑貨などを制作したり、販売する動きがあり、有名ブランドも参入するなど盛り上がりを見せています。
その反面、メタバースで取引される服などは、現行の日本の法律上、知的財産として保護されないため、コピー品の製造や販売が大きな問題となることが予想されています。
こうした背景から経済産業省は、メタバース上で模倣品の製造や販売を禁止する新たな規制を設けるとしています。
具体的には、メタバース上で販売等されるデザインを知的財産として保護した上で、権利者が模倣品の製造や販売の差し止め請求をできるようになるということです。
メタバース参入での注意点
新しい概念のメタバース。すでに不動産企業が物件のバーチャルツアーを行ったり、洋服の販売店がアバターでの試着や、実地店舗との連動でイベントを行ったり、地域活性化に活用されるケースもあります。これからさらに盛んになることを見越してメタバースビジネスに参入する企業も増加しています。では、企業が新規参入するうえでどういった点に注意したらよいのでしょうか?
(1)商品・サービスの定義付けとサービス設計
まずは、企業がメタバース上で利用者に提供する商品やサービスの中身を説明し、権利の範囲、義務、禁止行為、制限事項などを明確に定めることが大切です。また、利用規約に対する同意取得・本人認証などの方法の検討も必要になります。
また、法整備が追いついていない現状、メタバースという新しいプラットフォームでは、企業が予想していなかったような犯罪行為やトラブルが発生する懸念もあります。そうしたトラブルが発生した際にどのように対応するのか。メタバースへの知見の深い担当チームを社内に設置することも検討しなくてはなりません。
(2)迷惑行為防止
現在既に、アバターを介した痴漢行為や嫌がらせなどの迷惑行為が問題視されています。一方で、それらの行為が、既存の刑法等に照らしたときに、必ずしも犯罪を構成しないという指摘もあります。
法整備が追いついていない以上、メタバース内での秩序や倫理を守るためには、サービス事業者が適切に利用ルールを定め、迷惑行為の規制を行うことが求められます。
(3)知的財産に関するルールの設定
冒頭でお伝えしたように、メタバース上のデザイン等の創作物については、法改正による整備が行われる見込みです。もっとも、改正法施行までタイムラグがあることから、創作物の取り扱いについてもサービス事業者側が利用規約でなるべく具体的に定めておく必要があります。ちなみに、オープンメタバースと呼ばれる、自由度の高い場所では、複数のプラットフォームで創作されたものを組み合わせて作品を創るケースもあるため、権利関係が一層複雑になる可能性があります。それらに対し、どのようなルールを適用するのか、入念な検討が必要です。
その他にも、サービス事業者は税務的な観点でも注意が必要です。これはイギリスの事案ですが、NFT(非代替性トークン)販売での売り上げなどに対して整備が進む中、付加価値税詐欺、いわゆる脱税の疑いでNFTと暗号資産が押収される事案が発生しています。
こうした規制は今後日本でも整備されることが考えられます。サービス事業者として、NFT販売後の税務処理についてもしっかりと準備する必要があります。
コメント
人・モノ・コンテンツが、国境を越え、さらにリアルとバーチャルとを行き来することになるメタバース。法務として、利用ルールの設計を求められる機会が増えそうです。
一方で、“空間としての自由度の高さ”もメタバースの特徴となるため、なんでもかんでもガチガチにルールで縛るという考え方はマッチしない部分があります。最低限守らなければならない全体ルールと共に、ユーザー同士の同意に基づき、特定のコミュニティ内のみで適用されるルールを用意するなど、レイヤーに分けたルール設定も必要になるかもしれません。
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