違法な電動アシスト自転車販売で初摘発、不正競争防止法の表示規制について
2023/01/17 コンプライアンス, 広告法務, 不正競争防止法

はじめに
法律で定められたアシスト力を超える電動アシスト自転車を適法品だと偽って販売したとして京都府警は16日、自転車販売会社「THE NeO」(京都市)と同社社長を書類送検していたことがわかりました。電動アシスト自転車での摘発は初とのことです。今回は不正競争防止法が規制する表示規制について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、自転車販売会社「THE NeO」は2021年12月~22年4月にインターネットショッピングサイトで道交法に定められた基準以上のアシスト力がある中国制の電動アシスト自転車「シーガル26」を法定内の性能であると表示して販売していたとされます。道交法では電動アシスト自転車について、人力とアシスト力の比率が1:2以下とされ、時速24キロ以上ではアシストしないなどの基準が定められており、同自転車はそれらを超過しているとのことです。京都府警は昨年9月に同社を捜索し、同自転車を全国で少なくとも136台販売したと見られており、同社と代表取締役である50代の男性を不正競争防止法違反の容疑で書類送検しました。
不正競争防止法の表示規制
不正競争防止法では事業者間の公正な競争を阻害する行為を不正競争行為として類型化し禁止しております。そして2条1項20号では、商品または役務、その広告等において、原産地、品質、内容、製造方法、用途、数量、質などについて誤認させるような表示をし、販売等を行うことが禁止されております。これを品質等誤認惹起行為と言います。対象となるのは商品やサービス、それらの広告、そして「取引に用いる書類や通信」です。この取引に用いる書類には注文書や見積書、納品書、請求書、計算書、契約書などが含まれ、通信には電話や電子メールなどが含まれるとされます。「誤認」とは実際に誤認が生じていることは必要ないとされ、誤認させるような表示となっていれば足りるとされております。
違反の効果
これら品質等誤認惹起行為があった場合、これにより営業上の利益を侵害された者またはそのおそれがある者は差し止めや侵害予防等を請求することができます(3条)。また営業上の利益の侵害があった場合、損害賠償を請求することもできます(4条)。営業上の利益の侵害とは、不正競争行為によって、本来なら売れたはずの商品が売れなくなったなどといった損害を言います。また不正の目的で誤認惹起行為を行った場合、罰則として5年以下の懲役、500万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されております(21条2項1号)。さらに両罰規定として法人についても3億円以下の罰金が科されることがあります(22条1項)。
誤認惹起行為の具体例
品質等誤認惹起行為と認められた例として次のような事例が挙げられます。まず電気用品安全法所定の検査を受けていないにもかかわらず、検査済みの場合のみ許されるPSEマークを表示して電子ブレーカーを販売していた事例で誤認惹起行為と判断されました(知財高裁平成24年9月13日)。また著名な例として本みりんではない調味料に「本みりん」を強調して「タイプ」「調味料」と表示して販売していた例(京都地裁平成2年4月25日)、京都で加工されただけで京都産ではないお茶を「京の柿茶」と表示して販売していた例(東京地裁平成6年11月30日)、加工のみをベルギーで行ったベルギー産ではないダイヤモンドを「原石ベルギー直輸入」と表示し通常よりも高価であるかのように販売していた例(東京高裁昭和53年5月23日)、鶏や豚を混ぜたミンチ肉を「牛100%」として販売していた例(札幌地裁平成20年3月19日)などが挙げられます。さらに特許権消滅後も国際特許で保護されているかのように表示をして販売していたという事例もあります(大阪地裁平成24年11月8日)。
コメント
本件で販売されていた電動アシスト自転車「シーガル26」はアシスト比率や速度上限について道路交通法所定の基準を超えるものであったとされます。しかし「THE NeO」では同製品について法定内の能力であると虚偽の表示をし販売していたとのことです。これは品質等について誤認させるような表示に当たると判断されたものと言えます。以上のように不正競争防止法では、法定の基準を満たしていることや検査済みであることなどについても誤認惹起表示の対象となります。今回は近年問題視されていた基準以上のアシスト力を有する自転車について、警鐘を鳴らす意味でも摘発されたものと考えられます。このような電動自転車の販売自体は違法ではありませんが、本来は原動機付自転車と同様の扱いとなるとされます。「検査済み」や「法定基準内」などの表示をする際には、実際にそれらを満たしているかを今一度確認して販売することが重要と言えるでしょう。
関連コンテンツ
新着情報

- 解説動画
斎藤 誠(三井住友信託銀行株式会社 ガバナンスコンサルティング部 部長(法務管掌))
斉藤 航(株式会社ブイキューブ バーチャル株主総会プロダクトマーケティングマネージャー)
- 【オンライン】電子提供制度下の株主総会振返りとバーチャル株主総会の挑戦 ~インタラクティブなバーチャル株主総会とは~
- 終了
- 視聴時間1時間8分

- 業務効率化
- クラウドリーガル公式資料ダウンロード
- 弁護士
- 目瀬 健太弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号

- 業務効率化
- 法務の業務効率化

- ニュース
- 福岡地裁が東輪ケミカルに2700万円支払い命令、「配車差別」と不当労働行為2025.4.24
- 労働環境の改善を求めたことにより「配車差別」を受けるようになったのは違法であるとして、東輪ケ...

- 解説動画
大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
- 終了
- 視聴時間1時間

- まとめ
- 株主提案の手続きと対応 まとめ2024.4.10
- 今年もまもなく定時株主総会の季節がやってきます。多くの企業にとってこの定時株主総会を問題無く無...
- 弁護士
- 原内 直哉弁護士
- インテンス法律事務所
- 〒162-0814
東京都新宿区新小川町4番7号アオヤギビル3階
- セミナー
熊谷 直弥 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所 パートナー/第一東京弁護士会所属)
- 【オンライン】2025年春・Web3/暗号資産の法令改正動向まとめ
- 終了
- 2025/04/23
- 12:00~13:00