岩手エッグデリカ会長ら、「味付ゆで卵」に係る食品衛生法違反の疑いで逮捕
2023/01/17 コンプライアンス, 食品衛生法, 食料品メーカー

はじめに
コンビニやスーパーなどで販売されている「味付ゆでたまご」。昨今の健康意識の高まりや手ごろな値段から人気の商品として知られ、陳列棚に並ぶ姿を目にする機会も多いのではないでしょうか。その、味付ゆで卵の製造過程で、食品添加物として認められていない薬品「塩化ジデシルジメチルアンモニウム」を使っていたとして、岩手県警盛岡東署は1月11日、株式会社岩手エッグデリカの会長ら2名を、食品衛生法違反の疑いで逮捕しました。また、岩手県は昨年12月23日、指定外添加物の使用違反を理由に、食品衛生法第60条第1項に基づき、同社を無期限の営業禁止処分としています。現在、岩手エッグデリカでは自主回収を進めているということです。
食品添加物とは
食品添加物は、保存料、甘味料、着色料、香料などといった、食品の製造過程や食品の加工・保存 を目的として使われるものです。
食品添加物は味覚や色彩の幅を広げることのできる利便性の高いものである一方で、人類がこれまで口にしてきた食材とは異なります。
安全性確保の観点から、その食品添加物が人の健康を損なうおそれがないか専門家と確認した上で、問題ないがないと判断されたものだけが使用可能となっています。
●指定添加物 466品目
安全性を評価した上で、厚生労働大臣が指定したもの
(ソルビン酸、キシリトールなど)
●既存添加物 357品目
平成7年の法改正の際に、我が国において既に使用さ
れ、長い食経験があるものについて、例外的に指定を受けることなく使用・販売などが認められたもの
(クチナシ色素、タンニンなど)
●天然香料 約600品目
動植物から得られる天然の物質で、食品に香りを付ける目的で使用されるもの
(バニラ香料、カニ香料など)
●一般飲食物添加物 約100品目
一般に飲食に供されているもので添加物として使用されるもの
(イチゴジュース、寒天など)
食品衛生法について
2018年6月、改正法案が可決された、「食品衛生法」。食事での健康被害の発生を防止するために制定されました。
食品衛生法はスーパーマーケットなどの小売店、飲食店、食品関連の添加物や容器包装を取り扱う企業など、食品に関わる事業者全体に影響があるものです。
この法律の中では使用できる食品添加物は、天然物であるかどうかに関わらず原則として厚生労働大臣が指定したもののみ、と定められています。未指定の添加物を製造、輸入、使用、販売等することはできません。
また、原則、食品に使用した添加物すべてを表示する必要があります。表示が免除されているのは、食品に残存しないものなどについてだけです。
表記する際には、物質名で記載し、保存料、甘味料等の用途で使用したものについては、その用途名を併記。表示基準に合致しないものの販売等は禁止されています。
違反すれば、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金になる可能性がある食品衛生法。
過去にどんな違反事例があったのでしょうか。
○海外輸入菓子で違反に
ある輸入菓子から指定外添加物と表示に記載のない物質が検出されました。
本来、その菓子製品を日本向けに販売する際には、検査で検出された添加物などは使用しないことになっていました。実際に、年に一回実施されている自主検査では検出されなかったそうです。しかし、検査を実施した菓子を製造したロットは、製造時の人為的なミスにより、誤って添加物を使用していたことが判明したということです。
○添加物不記載で罰金に
ある企業が販売する油製品に添加物や化学薬品等が不使用かのような表記をしていましたが、実際には添加物が使用されていました。
また同じ会社の別商品についても、実際には外国産のものが含まれているにもかかわらず国産であるかのように表示していたということです。
この企業は課徴金納付命令を受け、合計793万円を科されています。
コメント
今回、岩手エッグデリカが使用した薬品は、カビの発生を抑えるため、卵を茹でる際に使われていたといいます。報道などによりますと、前の責任者以前から代々引き継がれてきた製造方法を踏襲することに力点が置かれ、違法との認識が薄まっていたことが原因とされています。
消費者の口に直接入る食品添加物。それだけに法的な規制は厳格となっています。また、国ごとに定めている数や規格が異なるため、食品製造の現場のみならず、海外から食品などを輸入する際などにも注意が必要です。
所管の都道府県の担当者など、しかるべき機関に相談しながら、ルールを正確に把握することが重要です。
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