名古屋市、勤務中に業務無関係のWEBサイトを114時間閲覧した職員を停職1ヶ月
2023/01/06 労務法務, 労働法全般

はじめに
名古屋市59歳の男性職員が勤務中にアダルトサイトなどを長時間にわたり閲覧し、さらに、その時間に対する残業代も一部受け取っていたとして懲戒処分を受けました。
報道などによりますと、男性職員は2022年1月から6月までの間、派遣先の名古屋市立大学での勤務中に、業務に関係のないWEBサイトをおよそ114時間閲覧しており、その半分以上のおよそ58時間がアダルトサイトの閲覧で占められていたということです。また、114時間のうち、8時間分は残業代として受給していたといいます。名古屋市からの聞き取りに対し男性職員は「仕事をしていて不安なことがよぎったときに不適切なサイトを見てしまった」と話していたということです。
名古屋市は男性職員を停職1か月の処分とし、さらにWEBサイトにアクセスしていた時間分の給料と残業代にあたる超過勤務手当およそ27万円分を返還させる予定です。
インターネットの私的利用とは?
会社から貸与されたパソコンやスマートフォンで業務に関係のないサイトを閲覧するなどの行為は「利益窃盗」とみなされ、刑法上の処罰対象ではありません。しかし、労使間で結んだ労働契約上、就業時間中は職務に専念しなければならないため、会社の許可・承認なく業務以外に時間を使うことは職務専念義務違反となります。
また、インターネットの私的利用は、義務違反だけでなくさまざまなリスクが付き纏います。
(1)パソコンのウイルス感染
(2)ネットワーク混雑による通信障害
(3)会社の機密情報の流出
従業員が会社の機密情報を漏洩した場合、職務専念義務違反だけでなく、「秘密保持義務違反」に問われる場合もあります。
そもそも、インターネットの私的利用とは何を指すのでしょうか。例として以下が挙げられます。
・業務と関係ないウェブサイトの閲覧
・私的なメールやチャットのやりとり
・SNSへのアクセス
これらは基本的に職務専念義務違反となりますが、直ちに懲戒処分が認められるとは限りません。処分の可否については、閲覧の対象・閲覧時間や頻度・社内規則の内容・過去の指導の有無・事業への影響等を踏まえて個別的に判断されるためです。
職務専念義務違反の線引き
過去の判例データとして、ある従業員が1日に2通程度の私用メールを使っていたとして裁判になりましたが、職務遂行の支障とはなっておらず、かつ、会社側に対して過度の経済的負担を掛けないといった社会通念上相当と認められる程度であることから、従業員が職務専念義務に違反したものとまでは認められないと判断されています。
一方で、大量のメール送信、ウェブサイト長時間閲覧に加えて、過去の処分歴などを加味して懲戒解雇となった事例もあります。
ある専門学校の教員が、勤務中に学校のパソコンアドレスから交際女性とのやり取りや出会い系サイトでのやり取りを5年間でおよそ1600件行っていたケースでは、懲戒解雇は有効であるとする判決が下されました。判決は、
・学校教諭は高い倫理観が求められること
・学校教諭は職務専念義務のレベルが高いこと
・学校のメールアドレスを私的に利用しないよう注意されていたにも関わらず使い続けていたこと
・過去に減給処分を受けていたのに引き続き職務で問題を起こしており反省の色がないとみなされること
などの事実を元に複合的に判断されたということです。
一方で、職務に影響をほぼ及ぼさず、会社の経済的負担も大きくないケースでは、「合理的な範囲でインターネットを利用することは社会通念上認められる」とされるケースもあります。
コメント
管理の難しい私的利用。加えて、近年はリモートワークの浸透により、従業員が一層、インターネットを私的利用しやすい環境が生まれています。さらに、リモートワーク中の私物PCの利用管理となると取り締まりが一層難しくなることでしょう。
その意味で、リモートワークを導入する会社では、時間管理から成果管理への移行が必須になって来ますが、成果の定義が難しい職種もあり簡単ではありません。
法務としては、インターネット利用管理が難しいことを前提としたうえで、少なくとも、私的利用発覚時に適切な処分がくだせるよう、就業時間中のインターネット利用に関するルールと違反時のペナルティを社内規程等に明記し、社内浸透させることが重要になります。
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