公法上の違法行為の私法上の効力について
2011/03/23   契約法務, 行政対応, 民法・商法, その他

東日本大地震の被害が明らかになるにつれて新たな問題が起きている。最近農林水産省、国土交通省が相次いで通知を出した。農水省は、茨城産の原発から一定距離の販売を自粛した野菜以外の野菜を小売業者が卸売業者に返品を求めたり、売買契約の破棄をするのは不適切であるとの通知をだした。これは、卸売市場法に反する売買契約の破棄が直ちに私法上無効とならないことを前提としている。同様に、厚生労働省は、旅館が、福島の原発から逃れてきた人の宿泊を拒否するのは、旅館業法に違反するとの通知を都道府県に出した。これも、旅館業法違反行為が直ちに私法上の宿泊契約の無効とはならないことを意味る。

 これらのケースで思い起こされるのが、最高裁判所の確立した判例である、公法上の違法行為はそれが公序良俗に反しない限り直ちに私法上の効力を左右するものではないとするものである。本件では、野菜の売買契約破棄は公序良俗違反に当たるか、宿泊契約拒否は公序良俗違反に当たるかは議論の分かれるところであり、直ちに公序良俗違反を認定して、私法上の効力の無効を認めるのは難しい。このような議論を行っているうち通知によって一定の歯止めがかかるかもしれないが、野菜の風評被害はどんどん拡大する。また、原発から逃れてきた福島県民の宿泊拒否も通知によって旅館が正しい法の解釈を知り、宿泊拒否が旅館業法に違反する旅館業法違反は罰則が科されるないし行政処分を受ける余地があるとのことで宿泊拒否が是正されることになる。

 ずいぶん迂遠な話である。平常時であればこのような解釈を行っていれば足りるであろうが、大地震のような緊急時には、行政庁に一定の強制力を与えるのも一考に価するのではないか。そのためには平時に危機管理の緊急事態法を制定しておく必要があったと思われる。しかし、政治とお金の問題ばかり追及する国会にはそのようなことは望めず、緊急事態におろおろするばかりで迅速に緊急事態に対処する特別措置法を制定し即日施行することもない。そうこうしているうちに、被害はどんどん拡大するのである。永田町の住人の迅速な判断が待たれる。

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