中国電力、カルテルで707億円の課徴金納付命令書案を受領
2022/12/14 コンプライアンス, 独禁法対応, 独占禁止法, エネルギー関連

はじめに
公正取引委員会は、企業向け電力供給に関しカルテルを結び独占禁止法違反をしたとして、中国電力に対し、707億円の課徴金納付を命じる処分案および排除措置命令案の通知を行いました。
中国電力は、特別高圧電力及び高圧電力の供給に関し、大手電力会社との間でカルテルを結んだ独占禁止法違反の疑いがあるとして、2021年4月13日及び同年7月13日に公正取引委員会の立入検査を受け、それ以降同委員会による調査に協力して来ました。
なお、中国電力は、今回の公正取引委員会からの通知を受け、12月2日、2023年3月期に707億1500万円の特別損失を計上すると発表しています。
独占禁止法が規制する「不当な取引制限」とは
不当な取引制限は、独占禁止法第3条で禁止されている行為です。不当な取引制限に該当する行為には、「カルテル」と「入札談合」があります。本件で問題となっている「カルテル」は、事業者又は業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決める行為です。
独占禁止法違反行為を行った場合、犯罪行為として懲役や罰金などの刑事罰を受ける場合があります。不当な取引制限違反は、最も厳しい刑罰が設けられており、違反を行った者には5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が、法人に対しては5億円以下の罰金が科せられます。
本件で処分案として通知された課徴金は、上記罰金とは異なり、カルテル・入札談合等の違反行為防止という行政目的を達成するため、行政庁が違反事業者等に対して課す金銭的不利益のことをいいます。課徴金は行政罰であり、罰金は刑罰である点で異なり、併科されることもあります。本件処分案の707億円という課徴金額は、過去最高額とされています。
「不当な取引制限」の要件
不当な取引制限の要件は、
①他の事業者と共同したこと
②事業活動を相互拘束したこと
③公共の利益に反したこと
④一定の取引分野における競争を実質的に制限したこと
⑤公正取引委員会の告発(独占禁止法96条1項)
となります。実務においてたびたび問題となるのが、「意思連絡」の要件該当性であり、かかる要件こそが単独行為との分水嶺となるものです。なぜならビジネスにおいて、他社が差別化を図ろうとして価格設定等をした場合に、他社に劣らないように他社の価格設定に寄せるということは珍しいことではないからです。
意思連絡があると認められるためには、「単に行為の結果が外形上一致した事実があるだけでは未だ十分でなく、進んで行為者間に何等かの意思の連絡が存することを必要とするものと解する」と判例で言及されています。
現状、中国電力は公正取引委員会に対し、返答を留保している状態であり、不当な取引制限の要件を充足しているか否かで争うかどうかわからない状況です。仮に本件処分案どおりの課徴金納付命令が下され、同命令に対し不服とし争う場合、命令取消の訴えを提起して審理を行わせることとなります。
コメント
報道などによりますと、今回の大手電力会社3社(中国電力、中部電力、九州電力)のカルテルに関し、3社合計で過去最高の1000億円を超える課徴金納付命令案が通知されているといいます。その一方で、中国電力は、11月25日に、現行の電気料金(規制部門)を平均31.33%引き上げる内容の特定小売供給約款の変更認可申請を経済産業省に対して行っています。
本件に関し、松野官房長官は、「当該申請の審査については、課徴金納付命令の影響は及ばない」旨の声明を出していますが、この状況下で値上げに対して国民の理解を得るのは困難と予想されます。
中国電力が行った電気料金値上げ申請の趨勢も含め、今後の動向に注目が集まります。
【関連リンク】
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