リーチサイト運営で初検挙、改正著作権法について
2022/12/02 知財・ライセンス, 著作権法

はじめに
違法なウェブサイトに誘導する「リーチサイト」を開設した疑いで、宮城県警が東京都の運営会社を書類送検していたことがわかりました。リーチサイト運営による検挙は初とのことです。今回は令和2年に改正された著作権法のリーチサイト規制について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、著作権法違反の疑いで書類送検されたのは東京都豊島区の「KYS合同会社」とされ、今年7月~8月下旬までの間に、アダルトビデオ13作品が違法にアップロードされたサイトに利用者を誘導するリーチサイトを開設した疑いが持たれているとのことです。昨年11月に同社の役員の男が著作権法違反の疑いで逮捕されており、リーチサイトの運営によっておよそ1億3000万円の広告収入を得ていたと供述しているとされます。著作権法改正以後、リーチサイトの開設で法人が立件されるのは今回が初とのことです。
リーチサイトとは
リーチサイトとは、著作物などが違法にアップロードされたサイトに利用者を誘導するため、そのリンク情報などを提供するサイトを言います。それ自体は著作物などコンテンツを提供しているわけではないということです。アニメや映画、漫画などの著作物が違法にアップロードされた、いわゆる海賊版サイトへの誘導で利用者のアクセスを集め、それにより広告収入を得ることを目的としております。アプリケーションソフトでこのような誘導をする場合もあり、これをリーチアプリと呼ばれます。このようなリーチサイトは他人の著作物に只乗りして利益を得るだけでなく、違法にアップロードされた海賊版の利用者によるダウンロードも助長するとして問題視されてきました。しかし従前の著作権法の規定ではこのようなリーチサイトを直接規制することは困難とされてきました。そこで令和2年の法改正によってリーチサイトも規制の対象となりました。
リーチサイト規制
改正著作権法113条2項1号、2号によりますと、リンク提供の態様に照らして、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト、またはプログラムに関しては、当該著作物等が侵害著作物等であることについて悪意または知り得たと認められる相当な理由がある場合は著作権侵害行為とみなされます。違法アップロードされているサイトと知って、そのようなサイトへのリンク集やアプリを作成した場合ということです。リンクを促す掲示板も含まれるとされますが、単に公衆への提示の機会を提供したに過ぎない者は除外されます(119条2項4号カッコ書き)。単に掲示板や動画投稿サイトを作成・運営しているだけでは該当しないということです。またリンクの提供は、直接的に違法アップロードがなされているサイトへ誘導するものだけでなく、間接的に該当サイトへ誘導する場合も含まれると言われております。
違反した場合
リーチサイトの提供を行った場合、刑事罰として5年以下の懲役、500万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されております(119条2項4号、5号)。上記のようにリンク先が違法コンテンツであることを知った上で、または知り得たと認められる相当な理由がある場合、つまり故意がある場合にのみ違法となります。また本罪は親告罪とされ、被害者側の告訴がなければ起訴できないとされます(123条1項)。なおリンクの提供のみを行った場合は3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となります(120条の2第3号)。またこれら刑事罰の他に、これらのサイトを運営している者に対して差止請求(112条)や損害賠償請求を行うことも可能です(民法709条、著作権法114条)。
コメント
本件でKYS合同会社はアダルトビデオが違法にアップロードされたサイトに利用者を誘導するリンクサイトを開設・運営していたとされます。これは侵害著作物に公衆を殊更に誘導するものと言え、違法なリーチサイトに該当すると考えられます。改正著作権法が施行されてから初めての敵発例となりました。近年インターネット上に著作物が違法にアップロードされる、いわゆる海賊版が溢れております。さらにそれらへのリンク集が違法ダウンロードなどを加速させ、それによって広告収益を得ているとされます。令和2年改正でこのような只乗り行為についても摘発することが可能となりました。自社のコンテンツが違法にアップロードされている場合は、該当サイトだけでなくリンクサイト等にも差し止め請求が可能となります。またこのような違法サイトに広告を依頼していないかなどについても、今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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