東日本大震災という不可抗力 -契約における不可抗力免責条項-
2011/03/18   契約法務, 民法・商法, その他

不可抗力免責条項とは

契約書には、いわゆる不可抗力免責条項が規定されているのが一般的だ。たとえば、以下のような規定がある。

第●条(不可抗力免責)
天変地異、戦争・内乱・暴動、法令の改廃・制定、公権力による命令・処分、労働争議、輸送機関・通信回線の事故、原材料・運賃の高騰、為替の大幅な変動その他当事者の責めに帰すことのできない不可抗力による契約の全部または一部の履行遅滞、履行不能または不完全履行については、当該当事者は責任を負わない。

東日本大震災は、文頭の「天変地異」にあたる。地震による直接の被害だけでなく、停電も重なり、納品が遅れたり不可能になったりした企業は多数に上ると考えられるが、この免責条項を根拠に、債務不履行に基づく損害賠償の責任を免れることができる可能性がある。
もっとも、東日本大震災に関しては、どの範囲で免責が認められるかが契約当事者にとっては重大な関心事ではなかろうか。震災と無関係な債務不履行が免責の対象とならないことはいうまでもないが、震災の被害の全容も把握できない現状では、免責の範囲や額を確定することは難しい。より詳細な状況の把握、相手方との交渉が必要となると考えられる。

相手方が提出した免責条項の注意点

なお、免責条項を相手方が作成した場合には、若干の注意が必要である。本来相手方に帰責性つまり落ち度がある事象であって免責すべきでないものが、「不可抗力」としてこっそりと紛れ込んでいる可能性があるからだ。たとえば、相手方の下請先の債務不履行があげられる。これは、その下請先を選択し、業務について指揮監督する義務を負う相手方が責任を負うべきものであるから、「不可抗力」に含めるべきではない。「不可抗力」として相手方を免責すると、本来認められるはずの損害賠償請求などが不可能となり、自社に不利になるおそれがあるからだ。

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