総務省、「プラットフォームサービスに関する研究会」意見募集の結果公表
2022/09/09   プロバイダ責任制限法, IT

はじめに


2022年8月23日に、総務省が「プラットフォームサービスに関する研究会」についての、意見募集結果に基づく資料を公開しました。本資料は、7月5日から8月3日にかけて、同省が発表した「プラットフォームサービスに関する研究会 第二次とりまとめ(案)」に対する意見を公募したものを、取りまとめたものとなっています。

意見提出者の中には、個人のみならず、ヤフー株式会社や株式会社 NTT ドコモ、グーグル合同会社、LINE 株式会社、KDDI 株式会社、ソフトバンク株式会社など、大手プラットフォーム事業者の回答も多く見られ、プラットフォームサービスに対しての強い関心を伺わせる結果になりました。

本資料では、提出された多数の意見を類型化し、それぞれの意見に対しての見解等を述べています。誹謗中傷や偽情報など、以前から問題になっているテーマが主に取り上げられており、インターネット事業に関わる方はもちろんのこと、一般ユーザーとしてインターネットを利用する方にとっても参考になる資料となっています。

その中で、今回は、有害情報・偽情報に対するプラットフォーム事業者の対応に関する意見をご紹介します。

 

意見募集の結果について


(1)違法ではないが有害な書き込みへの対応


今回の意見募集の対象となった第二次取りまとめ(案)では、違法ではないが有害な書き込みに対しては、

・プラットフォーム事業者は、自らのポリシーや約款に基づき、過剰削除の懸念や表現の自由の萎縮を防ぐことに留意した上で、適切に削除等の対応を行うことが求められる。
・特に一定の短期間の間に大量の誹謗中傷が集まった場合に、既存の機能・取組において効果的に対応が可能なのかという点について、プラットフォーム事業者は自ら検証を行い、仮に効果が見られない場合には、更なるアーキテクチャ上の工夫の導入について検討を行うことが望ましい。

といった提言が行われていました。これに対し、ヤフー株式会社は、

①現状、プラットフォーム事業者が違法性のない投稿を削除した場合に投稿者に対し損害賠償責任を負うリスクを否定できないため、対応すべき投稿の範囲を具体的かつ明確に特定して欲しい。
 
②特に、プロバイダ責任制限法第3条のプロバイダ事業者の免責範囲やプロバイダ事業者の不作為責任との関係について整理を示すとともに、必要に応じて、プラットフォームが自主的に削除した場合を免責の対象として加えるなどの措置について検討して欲しい。
 
③プラットフォーム事業者が、「表現の自由」に関する問題を取り扱う立場にあることを踏まえ、政府による関与を真に必要な場合に限定する観点から、政府が報告の求めや指導を行う場合の要件や対象範囲を明確にして欲しい。


といった意見を提出しています。
 

(2)偽情報への対応


プラットフォーム上においては、デマや悪意のある流言飛語など、真偽不明で信頼性の低い情報が容易に流通・拡散されてしまうことから、近年、プラットフォーム上の偽情報への適切な対応が課題として挙げられています。これに対し、LINE 株式会社は、偽情報については、何が偽情報であるかの判断が非常に難しいことを指摘したうえで、

①プラットフォーム事業者だけで実態把握、リスク分析・評価、取組の効果分析を行うの困難であること
 
②ファクトチェック推進団体、メディア、学術研究機関等と連携して実施していくことが望ましいこと


などを主張しています。
 

(3)プラットフォーム事業者の違法・有害情報への対応の共同規制


違法・有害情報対策の今後の方向性として、第二次取りまとめ(案)では、プラットフォーム事業者による投稿の削除やアカウントの凍結等の措置が過不足なく行われているかに関する透明性・説明責任の確保に関して、共同規制の可能性についても触れていました。これに対し、一般社団法人日本新聞協会は、

①第二次取りまとめ(案)では、プラットフォーム事業者に対する削除義務や罰則の導入につき、「極めて慎重な検討を要する」と言及されており、表現の自由に配慮した方針だと受け止める。
 
②研究会の議論では、政府によるコンテンツ規制は避けるべきといった指摘や、削除義務がプラットフォーム事業者の過剰な対応を引き起こしかねないとの懸念が寄せられた。安易な規制導入は、表現の自由に悪影響を及ぼす可能性が極めて高い。


といった内容の意見を提出しています。

 

今後の課題について


総務省は、今後について、インターネットの誹謗中傷や偽情報などの様々な問題に対して、プラットフォーム事業者などに協力してもらい、モニタリングなどの結果を参考にするとしました。国内だけに限らず、海外の動向も含めながら幅広い視野で見ていき、今後の取組の方向性を示すとしています。

また、インターネット環境の担い手の増加・複雑化などもあり情報削除や発信者特定などが困難になっている現状を踏まえ、掲示板や、まとめサイトなども含め、ミドルメディアの違法性や有害状況なども見て行きながら、幅広く対策を行っていくことが大切であるとしています。

さらに、発信者情報開示関係についても、改正プロバイダ責任制限法による10月1日(2022年)施行に向け、円滑な新制度の運用に対して協議を行うとしています。

 

コメント


ネット上で行われる誹謗中傷や偽情報の発信などの問題は、以前から存在はしていたものの、全体像の把握の難しさから、現状、十分な管理ができていない部分が多く見られます。今回、総務省としては、改正プロバイダ責任制限法等が施行されること、プラットフォームサービスに対する多数の意見が挙がったこと等から、こうした問題への対策の検討が急務になってくると認識しているようです。また、今後は、予防の側面だけではなく、被害にあったユーザーの円滑な相談対応など、ユーザビリティを高めていくこと重要なテーマとなりそうです。
 

【関連リンク】
プラットフォームサービスに関する研究会 第二次とりまとめ(案)
「プラットフォームサービスに関する研究会 第二次とりまとめ(案)」に対する意見募集結果
 

シェアする

  • はてなブックマークに追加
  • LINEで送る
  • 資質タイプ×業務フィールドチェック
  • TKC
  • 法務人材の紹介 経験者・法科大学院修了生
  • 法務人材の派遣 登録者多数/高い法的素養

新着情報

公式メールマガジン

企業法務ナビでは、不定期に法務に関する有益な情報(最新の法律情報、研修、交流会(MSサロン)の開催)をお届けするメールマガジンを配信しています。

申込は、こちらのボタンから。

メルマガ会員登録

公式SNS

企業法務ナビでは各種SNSでも
法務ニュースの新着情報をお届けしております。

企業法務ナビの課題別ソリューション

企業法務人手不足を解消したい!

2007年創業以来、法務経験者・法科大学院修了生など
企業法務に特化した人材紹介・派遣を行っております。

業務を効率化したい!

企業法務業務を効率化したい!

契約法務、翻訳等、法務部門に関連する業務を
効率化するリーガルテック商材や、
アウトソーシングサービス等をご紹介しています。

企業法務の業務を効率化

公式メールマガジン

企業法務ナビでは、不定期に法務に関する有益な情報(最新の法律情報、研修、交流会(MSサロン)の開催)をお届けするメールマガジンを配信しています。

申込は、こちらのボタンから。

メルマガ会員登録

公式SNS

企業法務ナビでは各種SNSでも
法務ニュースの新着情報をお届けしております。

企業法務ナビに興味を持たれた法人様へ

企業法務ナビを活用して顧客開拓をされたい企業、弁護士の方はこちらからお問い合わせください。