【景表法】消費者庁、晋遊舎に対する課徴金納付命令の内容を公表
2022/08/08   広告法務, 景品表示法

はじめに


消費者庁は8月5日、株式会社晋遊舎に対し、同社が懸賞付きパズル雑誌計63誌に対して行った懸賞表示について、景品表示法第8条第1項の規定に基づき、課徴金納付命令を発出しました。当該懸賞は、雑誌付録の応募券を集めて応募することで、抽選に参加でき、当選すると現金や金券等の景品が当たるという内容のものでした。今回は、同社の表示の問題点や課徴金納付命令の具体的な内容について見ていきましょう。

 

課徴金納付命令を受けた背景


晋遊舎は商品テスト雑誌やパズル誌・実用書・ムックの発行を主に手掛ける出版社です。今回の措置命令の対象となったのは、同社が提供していた「スペシャル!フレンズファミリーキャンペーン」と称する景品を提供する懸賞付きパズル雑誌29誌、「フレンズありがとうキャンペーン」と称する懸賞付きパズル雑誌34誌となっています。ちなみに、前者は、平成30年6月7日から平成31年2月26日まで、後者は令和元年6月7日から令和2年2月25日までの期間が、課徴金対象行為をした期間と認定されています。

消費者庁が公表した資料によると、例えば平成30年6月に発売された雑誌では、「現金1万円」、「25名様」、「現金10万円」、「10名様」、「現金5000円」、「75名様」などの表示が見られました。これらは、景品類及び当選者数を表示するとともに、応募締め切り日、発送に関する事項を表示することにより、あたかも、雑誌紙面上で実施された景品類提供企画に応募して当選すれば紙面上に表示された数の当選者に景品類が提供されるかのような表示を行っていたといえます。

そして、今回、問題視されたのは、上記景品の実際の発送スケジュールです。具体的には、晋遊舎が当選者に対して景品類を発送したのは、最長で応募締め切り日から626日後(約1年8カ月後)でした。

こうした発送が遅れた事実により、今回の表示が、景品表示法第5条第2号に規定する、いわゆる「有利誤認表示」に該当するとされ、課徴金納付命令の対象となってしまいました。

 

景品表示法第8条1項但書


景品表示法第8条1項は、「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であること又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であることを示す表示(以下、「優良・有利誤認表示」)」を行った事業者に対する課徴金納付命令について定めた規定です。

一方で、同法第8条1項但書では、事業者が課徴金対象行為を行った期間を通じて、自身が行った行為が「優良・有利誤認表示」に該当することを知らず、なおかつ、知らないことにつき過失がない場合には、課徴金納付命令を発することができない旨定められています。

本件でも、この但書の適用がないか検討されたようですが、消費者庁は、「晋遊舎は不当表示の防止等を図るための管理監督を十分に行うことなく、課徴金対象行為をしていた」として、但書の要件を満たさないとしています。

 

コメント


晋遊舎の課徴金対象行為の期間は平成30年6月7日から令和2年2月25日までの長期間に渡っており、その間雑誌購入者の間に混乱を招いていたことになります。今回の課徴金納付命令額は合計1,231万円となっており、晋遊舎は令和5年3月6日までに支払わなければなりません。

景品やキャンペーンは消費者の購入意欲を刺激する意味でビジネス上求められることが多く、法務担当者も、新規景品やキャンペーンについて相談される機会が少なくないと思います。しかし、今回の事例では、表示そのものというよりも、応募締切日から景品発送までの所要期間、すなわち、「運用」の部分が問題となったともいえます。今回の事例では、発送まで262日を要した行為についても、課徴金納付命令の対象行為と認定されています。景品・キャンペーンの法務相談に乗る際は、「景品の発送を何日以内に行えるのか」という運用面についても、慎重に確認する必要がありそうです。

 

【関連リンク】株式会社晋遊舎に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について(別添資料)
 

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