土地所有権VS国家(公共の福祉)!! 浜松土地区画整理事業訴訟
2011/03/02 行政対応, 訴訟対応, 民事訴訟法, 住宅・不動産

ニュース概要
遠州鉄道遠州上島駅周辺の土地区画整理事業に反対する地権者らが浜松市に計画取消を訴えた訴訟(差し戻し審)の判決が2011年2月25日に静岡地裁であった。
土地区画整理事業は長く、計画段階で反対し住民が訴訟提起をしても、裁判所は具体的権利が侵害されたとはいえないとして、取り上げずにいた。しかし、この浜松市に対する訴えで最高裁は、「事業計画が決定されると、権利にいかなる影響が及ぶかについて、一定の限度で具体的に予測できる」「事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできない」として住民の具体的権利の侵害可能性を認め、地裁に差し戻した。
本判決はその差戻審である。最高裁の判決は行政訴訟の窓口を広げた判例変更として注目を浴び、土地区画整理の内容が司法の審理に及ぶことは滅多にないとして住民側の期待も高かった。しかし、判決は、行政の裁量を広く認め、住民の請求を棄却するものだった。判決理由で三木裁判長は、行政権が裁量権を乱用したとして違法とされるのは「計画の基礎とする重大な事実の誤認など、著しく妥当性を欠く場合のみ」とし、本事案は「計画範囲を狭めれば地権者の3分の2の賛成を確保でき、事業の円滑化が見込めるため、著しく不合理であることが明らかとはいえない」とした。
雑感
原理原則からいえば土地は個人が所有する「身体」が「労働」することによって獲得した「財」であり、この絶対的所有を保護するために作り出された怪獣が近代国家のはずである。しかし、福祉国家化した現代では、公共の福祉の名の下に国家によって土地所有権が脅かされている。日本の場合、憲法によって、正当な補償(要はゼニ)さえあれば土地の絶対所有は国家が侵せると堂々と書かれている始末だ。これではアベコベなのだが、最近の情報知財中心の世の中をみていると、知財の共有化が叫ばれており、「財」を個人が独占することで産業が発展する構図が崩れているように思う。ならば、近代法を根本から見直す必要に迫られるわけで、それは国家そのものの存在意義を問われることになる。本事件の根は結構深いような気がする。
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