文化庁が「インターネット上の海賊版による著作権侵害対策情報ポータルサイト」を公開
2022/06/09 知財・ライセンス, 著作権法

はじめに
文化庁は2022年6月1日、「インターネット上の海賊版による著作権侵害対策情報ポータルサイト」を作成し、ホームページ上に公開しました。このポータルサイトは、ここ最近インターネット上に違法な海賊版サイトが数多く存在し、著作権者等に大きな被害を与えていることから、権利者等が適切に権利行使をできるよう、情報をわかりやすく発信する目的で開設されたものです。今回は、ポータルサイトの主な内容について詳しく解説していきます。
著作権の基本と海賊版
「著作権の基本と海賊版」の項目では、著作権の基礎知識や海賊版の定義について解説されています。まず、著作権が、「著作物を作成した著作者の法律上認められた権利」で、著作者には作品を他人に利用されることを許諾したり禁止する権利が認められていることが解説されています。また、「海賊版被害について」の項目では、インターネット上に公開されている音楽・アニメ・映画・マンガ等の様々なコンテンツについて、正当な対価が権利者に支払われることなく公開されている著作権侵害コンテンツ(海賊版)が多く存在していることが指摘されています。
初めての「削除要請」ガイドブック
インターネット上の著作権侵害被害を受けた場合は、自身のコンテンツの海賊版を「削除要請」することで権利を守る方法があります。本ポータルサイトでは削除要請を円滑に行うために、著作権侵害(海賊版)対策ハンドブックがPDFでダウンロードできるようになっています。ハンドブックの一覧を見ると、最初に総論があり、その後米国、中国、ベトナム、ロシアそれぞれの削除要請の方法が具体的に明記されています。また、その他の調査・報告書として、諸外国の対応に関する調査や国別模倣対策マニュアル・報告書がダウンロードできるようになっています。
著作権に関するQ&Aの
今回のポータルサイトには、「よくある質問」がQ&A方式で掲載されています。例えば、よくある著作権侵害の例として「SNSで自身の著作物が違法にアップロードされている」場合があります。このような場合、主要なSNSは海賊版コンテンツの削除要請窓口を設けているため、サイトに削除要請を行うか、著作権侵害者の情報を特定したうえで、警告状送付、行政摘発の申立て、刑事告訴、海賊版コンテンツの削除や損害賠償を求める民事訴訟も検討できます。また、著作権侵害被害の報告が多く寄せられている中国サイトの場合は、ンテンツプロバイダやインターネットサービスプロバイダに対して削除要請をする必要があります。こちらは先述の削除要請ハンドブックなどを参考に手続きを進めることが推奨されています。
コメント
文化庁によると、ポータルサイトの掲載情報は随時更新するとともに、相談窓口を今年8月頃に開設する予定としています。日本における海賊版サイトの総訪問数は2021年7月時点で月間約6億アクセスにのぼるとされており、著作権侵害は深刻です。また、オンラインで流通する日本国内のコンテンツのうち、映画、出版、音楽、ゲームにかかるものの海賊版被害額は、年間3,000億円から4,300億円超に上るとされており、さらに、漫画の海賊版被害については年間でただ読みされた金額が1兆円超となるなど、正規版の市場規模約6,126億円を超える規模になっています。これらの不当・不正な市場の形成は、海賊版サイトの増加に起因していますが、それとともに著作権者・利用者双方のリテラシーも問題となってきます。今回のポータルサイト開設を機に、著作権者が著作権侵害に泣き寝入りすることなく、毅然と対抗するケースが増えれば、少しずつ利用者のリテラシーや危機感も高まって行くのではと予想されます。その意味でも、ポータルサイトを通じて、著作権被害に関する基礎知識をインターネット利用者に広く認知してもらい、利用者全体のリテラシーを高めることが重要になります。
【関連リンク】
外部リンク:文化庁|インターネット上の海賊版による著作権侵害対策情報ポータルサイト
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