ダイビルが上場廃止後、完全子会社へ/株式併合について
2022/04/06 商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに
ビル管理などを手掛ける「ダイビル」(大阪市北区)は先月29日、TOBや株式併合などを経て、商船三井の完全子会社となる予定である旨発表しました。それに伴い上場廃止となるとのことです。今回は株式併合の手続きについて見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、ダイビルの支配株主である商船三井は同社を完全子会社とするべく、昨年12月1日から今年1月18日にかけて株式公開買付(TOB)を行っていたとされます。それにより商船三井の株式保有割合は82.60%となり、3月14日付で株式併合の事前開示を行っておりました。それによりますと、併合割合は22,929,680株を1株に併合するとされ、効力発生日は4月28日、発行可能株式総数は20株とのことです。これによりダイビルは商船三井の完全子会社となる見通しです。なお4月26日には同社株式は上場廃止となる予定とされます。
株式併合とは
株式併合とは、いくつかの株式をあわせて、それよりも少数の株式とすることを言います。発行済株式が増えすぎ、1株あたりの価値が下がってしまった場合や株式管理コストが増大してしまった場合に行われることが多いと言えます。これにより市場に流通する自社株式を適切な数に調整することができます。また残存する少数株主を整理して上場廃止や完全子会社化するための手段としても利用されます。併合割合は特に制限はなく、2株を1株にすることも、7株を2株にすることも可能です。また種類株式発行会社の場合、特定の種類株式のみ併合することも、種類ごとに併合割合を変えることも可能です。ただし異なる種類の株式を併合することは許されず、同一の種類の株式内でのみ併合は可能とされます。
株式併合の手続き
株式併合を行うには例外なく株主総会の特別決議を経る必要があります(会社法180条2項、309条2項4号)。株式分割が取締役会決議で行えることに比して厳しい規制と言えます。株式分割と異なり、株式併合は株式を失う株主も出てくる可能性があることから株主を保護する趣旨と言えます。決議すべき事項は併合割合、効力発生日、併合する株式の種類、効力発生日における発行可能株式総数となります。これらについては株主への通知または公告を要し(181条1項)、また株券発行会社の場合は株券提供公告も必要です(219条1項)。さらに株主総会の2週間前から効力発生日後6ヶ月経過するまで事前および事後開示が必要となり、書面等を本店に備え置くこととなります(182条の2)。これは株式併合の組織再編的側面を考慮したものです。なお公開会社の場合、発行可能株式総数が発行済株式数の4倍を超えないようにする必要があります(180条3項)。
その他の注意点
会社法平成26年改正以降、株主保護の制度として株式併合差止請求と、反対株主の株式買取請求が認められております(182条の3、182条の4)。株式併合によって大量の端数が生じることにより株価が低下する可能性があり、株主の適切な価格での投下資本の回収を保障しようとする趣旨とされます。また差止請求は、株式併合が法令または定款に違反する場合に、株主が不利益を受けるおそれがあるときに行うことができます。なお単元株式数に併合割合を乗じた数が整数となる場合、たとえば1単元10株のところ、10株を1株に併合するといった場合は株主に影響がないことから差止はできないとされます。それ以外にも株式併合が種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合は当該種類株主総会の特別決議も必要とされます(322条1項2号)。
コメント
本件で商船三井はダイビルを完全子会社化するべく、昨年からTOBを行っておりました。これにより同社株式の82%以上を取得するいたり、残りの少数株主をキャッシュアウトするべく今回の株式併合手続きを進めており、先月29日の臨時株主総会で承認決議も経ております。以上のように完全子会社化および上場廃止を目指し場合、TOBなどにより株式を買い集め、その結果によって残存株主の整理を行っていくこととなります。本件ではTOBの結果8割強の取得となりましたが、9割を超えた場合は特別支配株主による株式売渡請求を行うことも可能です。また株式併合以外にも全部取得条項付種類株式への変更を利用する場合もあります。組織再編を検討している場合は、どのような手段、手続きが用意されているのかを把握して選択していくことが重要と言えるでしょう。
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