絵本読み聞かせ動画、著作権侵害のケースも?出版社も対応に追われる
2022/04/11 知財・ライセンス, 著作権法

はじめに
外出自粛によって在宅で子どもに絵本を読み聞かせをする需要が高まっています。もちろん、購入した絵本を自分の子どもに読み聞かせることに関しては問題は生じません。昨今問題になっているのは「絵本読み聞かせ動画」に関してです。今回は絵本読み聞かせ動画の問題点に関して解説していきます。
絵本読み聞かせ動画に対する業界内の反応
巣ごもり需要が増加したことによって、「〇〇が読んでみた」、「◎◎ちゃんに絵本を読んであげたよ」といった動画タイトルで、YouTubeなどの動画投稿サイトに絵本の読み聞かせ動画が多数投稿されるようになりました。中には、アニメーションが付された見ごたえのあるものもあります。しかし、著作者の許諾なく動画投稿サイトに読み聞かせ動画を投稿している場合には法的な問題が生じるケースがあります。
出版社ブロンズ新社によりますと、同社が出版している子供向け人気絵本「だるまさん」シリーズ(かがくいひろし作)につき、無断での動画共有サイトへの動画公開がこの2年間で900件ほどにのぼっているとしています。ブロンズ新社は、巣ごもり需要によって多くの絵本が子どもたちに認知されるようになったことを喜ぶ一方で、絵本の絵や文章の一部を著作者の許諾を得ずに切り取ったり変更したりすることが違法であること、使用する場合には出版社に連絡を取ってほしいこと等をアナウンスしています。
https://staffroom.hatenablog.com/entry/2020/04/11/150313
【参考】
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絵本読み聞かせ動画の法的問題点
絵本の作者には、自身が執筆した絵本につき、
・有線放送、インターネット等での配信行為(同法第23条第1項)
・閲覧者によるダウンロード・ストリーミング視聴を可能にする行為(同法第2条9号の5)
を行う権利(公衆送信権・送信可能化権)があります。
今回問題となっている絵本の読み聞かせ動画は、動画投稿者がYouTubeをはじめとする動画配信サイトのサーバー上に、絵本で描かれている挿絵や文章テキストをアップロードし、ストリーミング視聴を可能にするものです。そのため、絵本の作者が「インターネット公開可」などと出版社等に許諾を出しているケースを除き、絵本の作者が持つ送信可能化権を侵害していることになります。
さらに、動画の投稿により収入を得る等して、権利者の財産権(経済的な利益)を侵害していると見なされた場合、刑事告訴の対象になることもあります。
確認した限り、絵本の読み聞かせ動画投稿による逮捕者はいまだ出ていないようですが、過去にはファスト映画(映画会社の許諾を得ることなく、映画のあらすじや結末を10分ほどの映像にまとめた動画)の投稿者が逮捕された事例もあるため要注意です。
コメント
今回は巣ごもり需要によって発生した絵本読み聞かせ動画についての問題についてご紹介しました。例え、ステイホーム中の子供たちを喜ばせたいという純粋な動機で動画投稿を行っている場合でも、法的なトラブルに繋がる危険性は十分にあります。第三者の著作物を使用する際にはその著作物の著作権の所有者、もしくはその発行元に確認することが重要になります。
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