東京地検がSMBC日興証券の副社長らを逮捕、相場操縦とは
2022/03/25 金融法務, 金融商品取引法

はじめに
東京地検特捜部は24日、相場操縦行為を行っていたとして、SMBC日興証券の副社長らを金融商品取引法違反の容疑で逮捕していたことがわかりました。大手証券会社幹部が同罪で逮捕されるのは異例とのことです。今回は金商法の相場操縦について見ていきます。
事件の概要
報道などによりますと、SMBC日興証券の副社長と、エクイティ部元部長ら幹部5人は共謀して2021年4月、特定銘柄の終値の下落を防ぐために大量の買い注文をいれていたとされます。証券会社が立会取引時間外に大株主から株を買い取って売却先を募る、いわゆるブロックオファー取引に絡み行われたとのことです。東京地検特捜部は取引を成立させるために同社が組織的に株価を維持しようとしていたと見ており逮捕に踏み切ったとされます。副社長は違法な取引だとは思わなかったと主張しています。
相場操縦とは
相場操縦とは、一般投資家を誤解させ、取引を誘引する目的で相場を意図的・人為的に変動させ、その相場がいかにも自然の需給によって形成されたかのように装う行為を言います(金商法159条)。以前に取り上げた偽計や風説の流布、インサイダー取引などと同様に不公正取引の一種として禁止されております。このような行為は公正な価格形成を阻害し、投資者に不測の損害を与えることとなります。違反した場合には10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはこれらの併科となっております(197条1項5号)。また損害賠償責任や課徴金納付命令の対象ともなっております(174条)。以下具体的に相場操縦の態様について見ていきます。
相場操縦の態様
金商法159条各項では相場操縦行為として仮装・馴合売買、変動操作取引、安定操作取引などが規定されております。仮装・馴合売買とは、特定の株式の売買が盛んに行われていると他の投資家に誤解させる目的で自ら売り注文と買い注文を行い、それによって他の投資家が買付けることによって株価が上昇したところで売却するといった行為です。複数の者が通謀して行う場合は馴合売買と言います。権利の移転を目的とせずに売り・買い注文を出す点がポイントです。変動操作取引とは、複数の証券会社を介して、連続して高指値注文を行い、さらに下値に買い注文を大量に入れるなどの方法で活発に売買が行われているように誤解させる行為を言うとされております。現在値より下値で大量の買い注文を出したり、取引終了時刻に高値で買い注文を出す行為、約定させる意思の無い優先順位の低い大量の買い注文も該当する可能性があります。
安定操作取引とは
安定操作取引とは、有価証券等の相場を釘付けし、固定し、または安定させる目的で一連の売買等を行うことを言います。原則として相場操縦の一種として禁止されておりますが(159条3項)、政令に定める条件、対象者、手続きの範囲内で認められる場合があります。具体的には株式等の募集や売出しをやりやすくするために、主幹事証券会社などが一定期間市場で行う売買などが挙げられます。これが行われる場合には予め目論見書が開示されることとなります。市場の急激な需給バランスの変動により不適切に株価が変動して発行会社や一般投資家に望ましくない状況が発生することを防止するために行われます。
コメント
本件でSMBC日興証券は、特定の株式のブロックオファー取引で価格基準となる終値が大幅に下落することを回避し、株価が5070円程度に維持されることを目的として、指値5200円で大量の買い注文をいれていたとされます。これは一種の安定操作取引に該当しますが、政令で定める場合に違反していたとして違法な相場操縦の容疑が持たれております。以上のように金商法では市場における自然な需給による価格形成を歪める行為は相場操縦として禁止しております。中には適法なトレードと紙一重な行為類型も多いと言えます。風説の流布や偽計などの不公正取引に加えて、今回紹介したような相場操縦行為についても今一度社内で周知しておくことが重要と言えるでしょう。
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