沖電気工業など3社、消防無線の入札談合問題で和解
2022/02/22   コンプライアンス, 独占禁止法

はじめに


岡山県瀬戸内市の消防救急無線システムのデジタル化に関する入札談合問題で、市が施工を担当した東京の沖電気工業を含む3社に対して損害賠償を求めていた訴訟について、2022年2月1日、東京地裁で和解が成立したことを発表しました。この和解で、沖電気工業は市に対して解決金1629万円を支払うことになります。
 

事案の経緯

瀬戸内市によると、消防無線システムのデジタル化に関する発注は市が2013年にNTT西日本岡山支店(岡山市)と4億635万円で契約しており、その後沖電気工業と関連会社(沖クロステック株式会社、西日本電信電話株式会社)により施工されています。その後入札談合が発覚し、2018年2月2日、談合で得た不当な利益の返還を求めて岡山簡裁で3社と民事調停を試みましたが、不成立となります。これを受け、市は2019年4月に約7000万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴しています。

 

入札談合を不当とする法的根拠


入札談合が「不当な利益」とされる法的根拠は、独占禁止法に求めることができます。同法2条6項では、事業者が他の事業者と共同して、対価を決定し、維持し、もしくは引き上げ、または数量、技術、製品、設備もしくは取引の相手方を制限する等、相互にその事業活動を拘束し、または遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することを不当な取引制限として禁止する旨明記されています(3条後段)。これらに違反した場合には排除措置命令(7条)、課徴金納付命令(7条の2)の対象され、罰則としては5年以下の懲役、500万円以下の罰金、法人には5億円以下の罰金が規定されています(89条1項1号、95条1項1号)。これらに加え、民事上の賠償責任も生じることがあります(25条、民法709条)。
 

「不当な取引制限」の要件


不当な取引制限の要件としては、「意思の連絡」と「相互拘束」によって成立するとされています。意思の連絡は必ずしも明確に示されずとも、黙示的な合意的で足りるとされています。また、相互拘束についても、相互に連絡を取り合う関係が成立していれば要件に該当するとされています。
 

入札談合の不当な取引制限

入札談合の場合は、「基本合意」と「個別調整行為」に該当する場合、不当な取引とされると言われています。基本合意は、受注者や入札価格を業者が相互に調整し合い決定し、受注者以外の業者は受注者が落札できるよう協力するような体制のことを指します。さらに、個別調整行為とは、これらの基本合意に基づいて具体的に受注者を決め、他の業者が協力する行為を指します。

 

コメント


本件は、東京地裁により、沖電気工業が瀬戸内市など複数の自治体で同様の談合に関与したことを公正取引委員会が認定していることもあり、和解を勧告しました。
公正取引委員会の規制強化の甲斐もあってか、「令和2年度における独占禁止法違反事件の処理状況について」を見る限り、公正取引委員会が法的措置に踏み込んだ談合事件の数は近年減少傾向です(令和2年度は1件のみ)。談合を行うことで、短期的に企業側に一定のメリットがある一方で、今回のような不当利得返還請求による利益の吐き出し、公正取引委員会による課徴金納付命令、レピュテーションリスク(企業ブランドの低下)など、発覚時には、それまで享受してきたメリットを大きくひっくり返すほどのダメージを負いかねません。
法務としては、現場担当者や経営層に対し、今回のような談合摘発事例を随時共有することで、談合リスクに対する認識合わせをしておきたいところです。
 

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