豊胸サプリで優良誤認、ステマで初の措置命令へ
2021/11/16 コンプライアンス, 広告法務, 景品表示法

はじめに
消費者庁は9日、アフィリエイトサイトやインスタグラムなどで「バスト育ちすぎてヤバい!?」「#バストアップ効果」などと表示させて豊胸サプリを販売していたとして株式会社アクガレージとアシスト株式会社に対し景表法違反で措置命令を出していたことがわかりました。ステルスマーケティングで措置命令が出されるのは初とのことです。今回は優良誤認表示について見直していきます。
事案の概要
消費者庁の発表などによりますと、アクガレージとアシストの2社は少なくとも15人のインスタグラマーに自社の豊胸サプリメントを無償提供し、「#バストアップ」「#胸大きく」「#バストケア」「#女子力アップ」などのハッシュタグ付きで商品の紹介をするよう指示していたとされます。またアフィリエイトサイトで「バスト育ちすぎ」「SNSでバズッて、モデルやインスタグラマーがバスト激変」などと表示していたとのことです。消費者庁はこれらの表示には根拠が無く優良誤認表示に当たるとして表示の停止を求める措置命令を出しました。
優良誤認表示とは
景品表示法4条1項1号によりますと、商品または役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良であると示し、または事実に相違して他の事業者のものよりも著しく優良であると示し、不当に顧客を誘引し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害する表示は禁止されております。違反した場合には内閣総理大臣は事業者に対し差止等の必要な措置を命じることができ(7条1項)、この措置命令に違反した場合には2年以下の懲役または300万円以下の罰金、情状により併科となります(36条)。都道府県知事も差止指示をすることができます(33条11項)。また課徴金納付命令が出される場合もあります(8条1項)。
優良誤認表示の要件
優良誤認表示の対象はすべての商品、すべてのサービスとなっております。そして表示を行った事業者の故意・過失は問われないとされ、故意・過失が無くても措置命令を出すことができるとされます(東京高裁平成19年(行ケ)5号)。「著しく優良」とは、一般消費者を基準として、誇張・誇大の程度が社会一般に許容される程度を超えるものを言うとされ、その表示を誤認して顧客が誘引されるかで判断されるとされております(東京高裁平成13年(行ケ)454号)。つまり広告や宣伝の中で一般消費者に購入されるように、ある程度の誇張を行うことは許容されているということです。また実際に一般消費者に誤認が生じたことまでは要件とされておらず、生じる可能性が高いと認められる場合に成立するとされます(審決平成11年10月1日)。
行政処分の手続き
景表法に違反する表示がされている疑いがある場合、消費者庁は調査を開始します。その際に必要がある場合は事業者に報告や帳簿、その他の物件などの提出を命じたり立入検査をすることができます(29条1項)。違反が認められる場合は弁明の機会が与えられ(14条)、措置命令や課徴金納付命令が出されることとなります。消費者庁の調査開始前に自主的に報告した場合は課徴金が50%減額されます(9条)。購入者に対し返金措置を行った場合も課徴金が減額されることがあります(10条)。これらの行政措置に不服がある場合は審査請求や取消訴訟を提起することもできます。
コメント
本件でアクガレージとアシストの2社は自社の販売する豊胸サプリメントの販売に際し、15人以上のインスタグラマーに無償提供して商品を取り上げるよう依頼していたとされます。このようないわゆるステルスマーケティングに景表法が適用され措置命令が出されるのは初とのことです。ステルスマーケティングは利害関係の無い第三者が体験談のように表現することから消費者には販売者の宣伝よりも説得力があり信じやすく、正常な判断を阻害しやすいと言われてきました。今回消費者庁がこのような宣伝手法に対しても摘発に乗り出したものと言えます。今後さらに法整備なども強化されていくことが予想されます。自社製品をインターネット上で宣伝している場合には、今一度優良誤認表示となっていないかを確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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