日本アムウェイへ違法勧誘、特商法の規制について
2021/11/12   コンプライアンス, 特定商取引法

はじめに

 マッチングアプリで知り合った女性に勧誘目的を告げずに日本アムウェイへの会員登録を勧めた疑いで京都府警は11日、京都府職員の男ら2人を逮捕していたことがわかりました。同様の被害による苦情が数十件寄せられていたとのことです。今回は特商法による規制を見直していきます。

 

事案の概要

 報道などによりますと、逮捕された京都府職員森口卓也容疑者(26)と自称自営業岡田真里容疑者(38)はマッチングアプリで知り合った女性を勧誘目的を告げずに一般人が出入りしない建物内で「日本アムウェイ」(渋谷区)への会員登録の勧誘を行ったとされます。森田容疑者は女性に対し「知人にエステティシャンがいる」と岡田容疑者を紹介し、岡田容疑者が施術を行った後に化粧品の購入と入会を勧めたとのことです。日本アムウェイは生活用品などの無店舗販売を手掛けており、2人は個人事業主として独立した形で商品を販売する会員であると供述しているとされます。

 

特定商取引法の訪問販売規制

 特定商取引法では、訪問販売に際して事業者には各種義務や禁止事項が規定されております。特商法での「訪問販売」とは販売業者または役務提供事業者が営業所等以外の場所で契約して行う商品、特定権利の販売や役務の提供を言うとされております(2条)。消費者の住居を訪れ勧誘を行う場合が典型例と言えますが、路上や喫茶店での販売、ホテルや公民館などでの展示販売も該当します。また電話や郵便、SNS等で勧誘目的を明示せずに営業所等に呼び出す、いわゆるアポイントメントセールスも訪問販売に該当するとされております。

 

事業者の義務と禁止事項

 特商法では事業者に訪問販売の勧誘に先立って事業者の氏名(名称)、勧誘が目的であること、販売しようとしている商品の種類を明示すること(3条)、また契約の際には書面の交付が義務付けられております(4条、5条)。この書面には、商品の種類、価格、代金の支払い方法と時期、商品の引き渡し時期、クーリングオフに関する事項、事業者の氏名や住所と電話番号、契約締結日、製造業者その他を記載することが必要です。そして禁止事項として、勧誘に際し故意に事実を告げないこと、契約解除を妨害するため事実を違うことを告げること、また相手を威迫すること、勧誘目的を告げないで公衆の出入りする場所以外に誘引し勧誘を行うことが規定されております(6条各号)。

 

行政処分・罰則

 これらの特商法の規定に違反した場合には事業者に対し業務改善指示(7条)や業務停止命令(8条)、業務禁止命令(8条の2)といった行政処分が出されることとなります。また6条の禁止行為を行った場合や業務停止命令、業務禁止命令に違反した場合は罰則として3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となっており(70条1号)、書面の交付義務に違反した場合には6ヶ月以下の懲役、100万円以下の罰金またはこれらの併科となります(71条1号)。

 

コメント

 本件で森口容疑者らはマッチングアプリで知り合った女性に対し、勧誘目的を告げずにエステに連れ出し、化粧品の購入や日本アムウェイへの会員登録を勧誘したとされます。これはアポイントメントセールスに当たり訪問販売に該当します。また勧誘目的の不告知は6条の禁止行為の1つで罰則の対象となっております。同社を巡っては同様の被害例が多数確認されております。以上のように訪問販売の際には勧誘目的であることを明示することが義務付けられております。これは3条の明示義務としてだけでなく不告知が禁止行為にもなっております。違反した場合は重い罰則が適用されます。自社製品の販売を勧誘している場合や、勧誘を外部委託している場合には、今一度これらの規定を見直しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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