パキスタン船員に有罪判決、入管難民法の乗員上陸許可とは
2021/10/19 外国人雇用, 入管法

はじめに
ビザ不要な船員の立場を悪用して不正に入国したとして、パキスタン国籍の船員に有罪判決が出ていたことがわかりました。本罪での有罪判決は全国初とのことです。今回は入管難民法の乗員上陸許可について見ていきます。
事案の概要
時事通信の報道によりますと、パキスタン国籍のアフリディ・アブドゥル・ムサウリ被告(31)は今年4月、関西空港での入国審査の際、船員として働く意思があるように装い、不正に乗員上陸許可を受けて入国したとされます。その後失踪して宮城県内で難民申請して仮滞在許可を得て国内に滞在していたとのことです。乗員上陸許可制度を悪用したとして入管難民法違反の罪で大阪地裁に起訴されておりました。
入管難民法の規制
入管難民法では、外国人の乗員が船舶等の乗り換え、休養、買物などの目的で日本に上陸を希望する場合に一定の範囲内で上陸を許可することができるとされます(16条)。船舶等の乗員が限られた範囲で日本にビザ無しで入国することができる制度です。これには1度限りの許可と1年の範囲で数度に渡る入国の許可の2種類が用意されております。この乗員上陸許可で許された期間を超えて滞在した場合、または許可を受けないで入国した場合、虚偽または不正の手段により許可を受けて入国した場合は罰則として3年以下の懲役・禁錮、300万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されております(70条2号、2号の2、7号)。
1度限りの許可
1度限りの上陸許可の場合は、外国人の乗員(日本で乗員となる場合も含む)が船舶等の乗り換え(日本での乗り組みも含む)、休養、買物その他これらの類似する目的で15日の範囲内で入国が許可されます(16条1項)。具体的には、1つの出入国港に上陸する場合は7日以内、特別の事由がある場合は15日以内、2以上の出入国港近傍に入国する場合は15日以内、他の船舶等への乗り換えの場合は7日以内、他の出入国港にある他の船舶等への乗り換えの場合は15日以内となっております(施行規則15条3項1号イ~ホ)。そして行動範囲は入国審査官が特別に認めた場合を除き、出入国港が所在する市町村の区域内、他の港の船舶等への乗り換えの場合はその船舶までの順路により定められます(同2号)。
定期的に入国する場合の許可
日本と外国の地域との間の航路・航空路で定期に就航する船舶や運送業に属する航空機乗組員が、数字にわたって日本国内で休養、買物、その他これらに類似する目的で入国を希望する場合は1年間許可を出すことができます(16条2項)。この場合は船舶の長や運送業者からの申請が必要となります。なお上記1度限りの許可も含め、これらの許可を出す際には期間や行動範囲、そのた必要と認める制限を付けることができ(同5項)、指紋押捺を求めることもできます(7項、施行規則15条の3)。また特定の感染症や過去に日本で1年以上の懲役・禁錮に処された者など5条各号に規定する上陸拒否事由に該当することが発覚した場合には直ちに許可が取り消されます。
コメント
本件でパキスタン国籍の被告は、関西空港から入国する際に船員として働くと虚偽の申告をして乗員上陸許可を受けたとされます。大阪地裁は日本での難民申請をするという目的を踏まえてもなお、犯行に大きく酌むべき点があるとは言えないとし、出入国管理行政を害したとして懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。
以上のように上陸する船舶や航空機の乗員は一定の要件のもとにビザ無しで日本に入国することが認められております。しかし上記のとおり上陸不許可事由がある場合は許可されず、また虚偽の申請を行った場合には重い罰則が規定されております。外国人従業員を使用している場合はこれらの入管難民法の規定を正確に把握しておくことが重要と言えるでしょう。
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