最高裁で「井筒八ツ橋」敗訴確定、品質等誤認惹起とは
2021/09/24 広告法務, 消費者取引関連法務, 不正競争防止法, その他

はじめに
京都銘菓八ツ橋の老舗「聖護院八ツ橋総本店」が表示している創業年には正当な根拠がないとしてライバル店の「井筒八ツ橋本舗」が差し止めを求めていた訴訟で14日、最高裁が上告不受理の決定を出していたことがわかりました。これにより敗訴が確定となります。今回は不正競争防止法の品質等誤認惹起について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、聖護院八ツ橋総本店はのれんや看板に「創業元禄二年」「since1689」と表示しているとされます。これに対し井筒八ツ橋本舗側はこれらの創業年に正確な根拠はなく、商品の優位性などを誤認させる表示にあたるとして、表示の差し止めや600万円の損害賠償を求め提訴していたとのことです。一審二審は、表示は300年以上前のことで明確な文献などがない言い伝えによるものとし誤認表示に当たらないとしました。井筒側は最高裁に上告しておりました。
不正競争防止法の規制
不正競争防止法2条1項20号によりますと、商品、役務またはその広告や取引に用いる書類等に、商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途、数量などについて誤認させるような表示等をすることは不正競争行為の一種として禁止されております。このような不正競争行為に対しては、営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある者は差し止め請求することができ(3条)、また損害賠償請求をすることができます(4条)。また不正の目的で品質等誤認惹起行為を行った場合は罰則として5年以下の懲役、500万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されております(21条2項)。法人の業務に関連して行なわれた場合には法人に対しても3億円以下の罰金が規定されております(22条1項)。
品質等誤認惹起行為の要件
品質等誤認惹起の「表示」とは商品やサービス、その広告、またはそれらに用いる書類等に表示することを言います。商品そのものやその包装、ラベル、タグ等から広告用の新聞、雑誌、テレビ、インターネット、契約書、見積書、請求書、領収書などあらゆるものが含まれます。そして表示内容については、原産地、品質、内容、製造方法、用途、数量等について誤認させるようなものであれば、実際に誤認が生じていることまでは不要とされております。そしてその判断は当該表示の内容、取引の実情など諸般の事情を考慮し、表示が付された商品全体を観察して取引者や需要者に誤認を生じさせるおそれがあるかどうかで判断すると言われております。
本件の論点
今回の老舗八ツ橋店の訴訟では、創業年についても不正競争防止法2条1項20号の対象となるかが争点となっていたとされます。本条では誤認惹起表示の対象として原産地、品質、内容、製造方法、用途、数量が列挙されております。これらに限定されるのか、それ以外も含まれるのかが問題となりました。一審京都地裁はこれらに限定され、創業年は含まれないとしました。二審大阪高裁もやはり規制対象は条文に列挙されたものに限定されるとしました。不正競争防止法では差し止めや損害額の推定など強力な規制や刑事罰の対象としていることから安易に対象を拡大すべきでないとしております。さらに誤認の対象となる事実は客観的に真偽が検証、確定されるようなものであるべきとしております。
コメント
本件で最高裁第3小法廷は井筒側の上告を受理しない決定をしました。これにより一審二審の判決が確定することとなります。品質等誤認惹起の対象は原産地、品質、内容、製造方法、用途、数量の条文に規定されるものに限定されると判断されました。以上のようにこれらの点について取引相手や消費者に誤認させる表示は違法となります。なお「実際より著しく優良」であると誤認させる場合は別途景表法違反となる可能性があります。どのようなものに、何について事実と異なる表示をすれば違法となるのかを正確に把握する必要があります。自社の製品に関する表示だけでなく、競合他社の表示についても今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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