宇都宮グランドホテル 破産手続開始決定
2021/09/03 事業再生・倒産, 破産法, その他

はじめに
宇都宮グランドホテルは8月20日、宇都宮地裁から破産開始決定を受けました。
事案の概要
宇都宮グランドホテルには皇族や海外要人の来館実績があり、名高いホテルとして有名でした。ピーク時には年間400件もの婚礼が執り行われていました。しかし、バブル崩壊後の営業環境の悪化で稼働率が低下しました。過大な金融債務が重荷となったものの、2016年1月にホテル敷地および建物を第三者に売却し、その売却代金を原資に金融債務を完済しました。2019年8月期には、リニューアル後から推進してきた過去の顧客の掘り起こしや大型案件等の効果で売上高は8億円に増加しました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年8月期は5億6000万円の売上高に対して、約8000万円の赤字を計上し、その後もコロナ禍の影響が及び続け、休館と営業を繰り返していましたが、2021年7月31日付でホテルの営業を終了し、破産手続きを受ける運びとなりました。
破産手続きとは
破産手続は,債務超過又は支払不能となった者に対し裁判所が破産手続の開始を決定し,破産管財人を選任して,その破産管財人が債務者の財産を金銭に換えて債権者に配当する手続です。破産手続きは倒産手続きの一類型として位置づけられ、倒産手続きには他に民事再生手続き等があります。破産手続きが開始されると、破産者である法人や会社は解散するのが通常ですが、解散したとしてもただちに法人格が消滅するわけではなく、その法人格は破産手続きによる清算の目的の範囲内において破産手続きが終了するまで存続するものとみなされます(破産法35条)。
破産手続き開始決定とは
破産手続開始決定を受けるためには、3つの条件を満たす必要があります。1つ目は、破産手続開始原因があることが必要です。「破産手続開始原因」とは、支払不能と債務超過の2つを意味します。「支払不能」とは、債務者の支払能力が低いことから、全ての債務について、継続的に返済を続けていくことができない状態にあることをいいます。これは、一部の債権者だけに返済できない場合や、一時的な資金不足で返済できない場合は含まれません。「債務超過」とは、債務者において、プラス財産よりマイナス財産の方が上回っている状態にあることをいいます。個人が破産する場合には、「支払不能」のみが破産手続開始原因となることに対し、法人が破産する場合には、「支払不能」と「債務超過」のいずれもが破産手続開始原因になるとされています。2つ目の条件は、破産障害事由がないことです。「破産障害事由」とは、破産手続きを開始できなくなる事実のことをいいます。たとえば、破産申立後に必要な予納金を納付していない場合や、破産とは別の倒産手続きが既に開始されている場合が「破産障害事由」にあたります。3つ目の条件は、「破産手続開始」の申し立てが適法であることです。この点は、破産を申し立てた人に申立権が認められるか、破産者に破産能力があるかなどを要素として判断されます。破産の申立権は、債務者と債権者、法人であれば、その代表者や理事などに認められています。
コメント
コロナ禍において意外にも倒産件数は例年に比べて少なくなっております。しかし、給付金や補償金の打ち止めや税の支払い等の関係で、来年度以降は倒産件数が増えていくのではないかと予想されます。企業法務従事者としては、取引先の企業がもし倒産しそうならば自社の損失を防ぐべく破産手続きの申立てをするなど、自社にとって適切な対応がとれるように破産手続きの理解をしておくとよいでしょう。
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