水道屋本舗に業務停止命令、特商法の訪問販売規制について
2021/09/03 消費者取引関連法務, 特定商取引法, その他

はじめに
水回りのトラブルの修理で嘘の説明をして高額な請求をしたとして、消費者庁は8月31日、修繕会社「アクアライン」(広島市)に対し業務停止命令を出していたことがわかりました。役員2人にも業務禁止命令が出ているとのことです。今回は特商法の訪問販売規制について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、同社は「水道屋本舗」の名前で電話帳広告に載せたり、マグネット式チラシを配布するなどして全国展開しており、2019年2月~4月にかけて、トイレ修理の見積もりを求められた際、「部品は製造終了していて、在庫もないので、トイレ一式を全部交換するしかない」などと説明し高額の費用を請求したとされます。また電話によりクーリングオフを申し出た消費者に「うちには、クーリングオフはありません」「見積書の裏にクーリングオフはできないと書いてるやろ。」などとあたかもクーリングオフはできないかのように告げていたとのことです。これに対し消費者庁は、再発防止等を求める指示と9ヶ月間の業務停止命令を出しております。
訪問販売規制
訪問販売とは、販売業者が営業所等以外の場所、例えば消費者の自宅等で契約して行う商品等の販売行為を言うとされます(特定商取引法2条)。典型的にはセールスマンが消費者の自宅に訪問して販売することです。キャッチセールスやアポイントメントセールスもこれに含まれます。一方、事業者間での取引や海外にいる人に対する契約、国や自治体が行う場合、自社の従業員に対して行う場合、株式会社以外が発行する新聞販売には適用除外となります(26条)。訪問販売に該当する場合には、事業者に一定の義務と禁止行為が定められており、違反した場合には業務改善の指示(7条)や業務停止命令(8条)、業務禁止命令(8条の2)が出され、これらの命令に違反した場合には罰則として3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されております(70条2号)。
訪問販売事業者の義務
事業者が訪問販売を行うに際しては、勧誘に先立って消費者に、事業者の氏名(名称)、勧誘目的であること、販売しようとする商品の種類を告げる必要があります(3条)。そして契約の締結に際しては、商品の種類、価格、代金支払い時期と方法、商品の引き渡し時期、クーリングオフに関する事項、事業者の氏名(名称)住所、電話番号、代表者の氏名、契約担当者の氏名、契約締結日、商品名、商品の型式、数量、商品に契約不適合がある場合の事業者の責任についての定めがある場合はその内容、解除に関する定めがある場合はその内容、その他特約がある場合はその内容を記載した書面を交付する必要があります(4条、5条)。
禁止行為
事業者は訪問販売を行うときは、消費者に勧誘を受ける意思があるかを確認するよう務めなければならず、消費者がその意思が無い旨を示したときは勧誘を継続すること、また後日改めて勧誘することも禁止されます(3条の2)。そして勧誘の際、または契約の解除を妨げるために虚偽の事実を告げること、故意に事実を告げないこと、相手を威迫して困惑させること、勧誘目的を告げずに誘引した消費者を公衆の出入りする場所以外で勧誘することが禁止されております(6条)。
コメント
本件で問題となったのは、トイレの部品がすでに製造中止で一式交換する必要があるなどと虚偽の事実を告げて契約し、高額な代金を請求したことと、クーリングオフを申し出た顧客に対し、クーリングオフはできないなどと説明したことです。いずれも特商法の禁止行為に該当すると言えます。特商法では訪問販売、電話勧誘販売、訪問購入、継続的役務提供については書面を受け取った時から8日間はクーリングオフができるとされております。以上のように特商法では訪問販売については電話勧誘などと同様にかなり厳格な規制を置いております。特に書面の交付は重要で、書面に不備がある場合、または書面の交付自体が行われていない場合はクーリングオフ期間が進行しないこととなります。訪問販売を行う際には、今一度特商法の規制を確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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