中小企業の知的財産保護のため、政府が指針を策定
2021/08/16 知財・ライセンス, 特許法, その他

はじめに
中小企業庁では、令和2年7月に有識者を交えた「知的財産取引検討会」を設置し、知的財産における取引の問題事例の整理を行うとともに、知的財産取引を適正に推進するための対応策について議論してきました。
これを踏まえ、問題事例の防止や知的財産取引における企業間の共存共栄を図るため、令和3年3月31日に「知的財産取引に関するガイドライン」を公表する運びとなりました。
問題事例の具体例
中小企業へのヒアリングによると、
①秘密保持契約・目的外使用禁止契約無しでの取引を強要される
②営業秘密であるノウハウの開示等を強要される
③ノウハウが含まれる設計図面等を買いたたかれる
④無償の技術指導・試作品製造等を強要される
⑤著しく均衡を失した名ばかりの共同研究開発契約の締結を強いられる
⑥特許の出願に干渉される
⑦知的財産権の無償譲渡・無償ライセンス等を強要される⑧知財訴訟等のリスクを転嫁される等、
問題事例は以上8類型に分類されます。
これらは各取引のフェーズにおいて、大企業と中小企業の対等な取引関係を築くという観点から、問題となり得る取引事例であるといえます。事例のより詳細な説明は、下記中小企業庁のHPに掲載されております。
ガイドラインの主な内容
上記問題事例に対処すべく、ガイドラインにおいて契約締結前・製造、開発段階・委託、販売、請負契約に関して・特許出願、知的財産権の譲渡、無償許諾、以上の各側面に照らしてガイドラインを策定しています。
具体的には、契約締結前に、相手方の秘密情報を相手方の事前の承諾なく取得又は開示を強要しないことや、相手方の意思に反して、秘密保持契約締結無しに、相手方の秘密を知り得る行為をしないことがガイドラインにおいて求められています。
また、製造、開発段階に関しては、無償の技術指導・試作品製造等の強制をしないこと、承諾がない知的財産やノウハウ等の利用をしないことや、共同開発の成果は、技術やアイディアの貢献度によって決められることが原則とし、これと異なる場合は相当の対価を支払うことが求められています。
そして、委託、販売、請負契約に関しては、製造委託本来の目的に照らして、合理的に必要と考えられる範囲を超えて、相手方の技術情報等の提供を求めてはならず、これを求める場合には相当の対価を支払うことや、製造委託の目的物とされていない金型の設計図面、CADデータその他技術データの提供を当事者の意に反して強制しないこと、さらに、監査や品質保証等の観点から秘密情報の開示を受ける必要がある場合には、あらかじめ監査等を必要とする箇所を明確にし、その目的を超えた秘密情報の取得をしないことが求められます。
特許出願、知的財産権の譲渡、無償許諾に関しては、取引と直接関係のない、又は、独自に開発した成果について出願等に干渉しないことや、相手方に帰属する知的財産権について、無償譲渡の強要や自社への単独帰属を強要しないこと、また、相手方の知的財産権の無償実施を強制しないことを求めています。
コメント
中小企業も大企業も、上記ガイドラインを意識して今後の取引に臨むことが求められます。企業法務担当者としては、ガイドラインの内容を正確に理解し、現在の取引及び今後の取引関係に反映させることが求められます。
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