公取委がプラットフォーマ―への規制強化を方針付け
2021/07/02 コンプライアンス, 情報セキュリティ, 独占禁止法, 個人情報保護法, その他

はじめに
公正取引委員会は6月25日に個人情報や企業が大量に保有するデータを市場取引する際の方針を示した報告書を公表しました。
このような情報を独占的に集める巨大IT企業が「プラットフォーマ―」と呼ばれ、情報化社会において重要な地位を占めることから独占禁止法を超える新たな規制の必要性があると示されています。
規制強化を求める背景
現状において、プラットフォーマ―のサービスが独占禁止法の定める優越的地位の濫用等に当たるか否かを事後審査するという形で規制をかけています。しかし、ビジネス環境の激変に大きく寄与する重要な市場であるにもかかわらず、当該規制ではプラットフォーマ―のデータ独占に対応しきれていません。
そこで、今回の報告書においてデータの取り扱いに関する禁止行為を予め類型化し、事後規制ではなく事前規制を施しデータ独占による弊害を極力排除するよう求めています。
データ独占による弊害
プラットフォーマーが個人情報等のデータを独占することにより、反競争的な行為がなされたときに独占禁止法の事後規制を受けたとしても、プラットフォーマ―が反競争的な行為により既に得た市場での優越的な地位までは元に戻すことはできず、違反行為のやり得になってしまいます。
そして、かかる優越的な地位というのは持続性があり、新規の競合他社はプラットフォーマ―ビジネスにおいて対抗しづらい状況が構築されていきます。また、市場における優越的地位を利用し、利用者に対して一方的なルールの押し付けや変更、サービスの押し付けや過剰なコストの負担を強いたり、審査やアカウント停止等に関する不明確・不合理な処遇をするなど取引慣行に関する問題も生じています。
公取委からの提言
このようなデータ独占状況に対する対応策として、自己の情報を取り扱われた個人に対し不利益をもたらさないように義務を負わせるルールの必要性等が提言されています。
また、利便性向上の観点から、公正取引委員会は情報銀行のサービス等を挙げました。情報銀行とは、顧客から同意を得た上で個人データを預かる事業のことをいい、情報を必要とする企業に情報を提供し個人情報を適切に管理するものをいいます。情報銀行のように、多くの事業者が保有するパーソナルデータが、個人の関与の下で仲介業者の下に集約されるビジネスモデルによりデータポータビリティ(企業に集約された自己の情報を他社のサービスに転用すること)が促進され利便性の高まりが期待できます。
コメント
プラットフォーマ―ビジネスに限らず、多様かつ変化のめざましいビジネスモデルに対する規制を画一的に行うことは難しいといえます。また、過剰規制を施すことによってイノベーションが阻害されてしまうおそれもあります。そのため、自主規制に委ねたいところではありますが、昨今の状況を鑑みるにそれでは不十分です。
プラットフォーマ―ビジネスが独占・寡占状況にあったとしても事業者・消費者はサービス面で恩恵を受けているという事実もあります。一概に規制を強化すればいいというわけではなく、複雑な問題であります。今後いかなる規制がなされるのか注目していきましょう。
企業法務に従事する者としては、プラットフォーマ―との取引を今一度見直し、独占体制による弊害が生じていないか、今回の報告書や将来に設けられ得る規制により今後のプラットフォーマ―との取引にどのような影響が出るのか、予め予測しておくとよいでしょう。
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