ホテルビスタ運営会社が東京地裁に申し立て、民事再生手続きについて
2021/03/31 事業再生・倒産, 倒産法, 破産法, その他

はじめに
ビジネスホテル「ホテルビスタ」を運営するビスタホテルマネジメント(千代田区)が11日、東京地裁に民事再生法適用を申請していたことがわかりました。負債総額は37億円とのことです。今回は再建型の法的整理手続きである民事再生について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、ビスタホテルマネジメントは2006年9月に設立され、訪日外国人客やビジネス客を対象として積極的に店舗展開を進め、全国に18店舗営業しているとされます。2019年12月期には売上が70億円超にのぼったものの、新型コロナウイルスの影響により客数が減少し、また東京五輪に向けた新規開業費用で資金繰りが悪化し今回の申立にいたったとのことです。東京地裁は同日保全・監督命令を出し、監督委員には長沢美智子弁護士(東京丸の内法律事務所)が選任されております。
民事再生とは
民事再生とは、債務超過などにより経済的に窮境にある債務者を裁判所認可の再生計画に基づいて救済し事業や経済状況の再生を図ることを目的とする手続きをいいます(1条)。破産や特別清算とは異なり裁判所の監督のもとで会社の立て直しを図るものと言えます。旧来存在していた和議法の問題点を改善し、使い勝手の良い手続きとして2004年に制定された民事再生法に基づく手続きです。会社などの法人だけでなく個人も対象となっており、支払不能や支払停止、債務超過のいずれかが生じるおそれがある場合、または事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときに裁判所に手続開始の申立を行うことができます(21条1項)。
民事再生手続きの流れ
(1)申立と手続き開始
民事再生手続きはまず管轄裁判所への申立から始まります(21条1項)。その際民事再生開始の原因となる事実を疎明する資料等を提出することとなり(23条)、また予納金を納付することとなります(24条1項)。裁判所は開始決定がなされるまで申し立てまたは職権で仮差押や仮処分を命じます(30条)。費用の予納が無いときや既に破産手続き等が開始されておりそちらのほうが債権者の利益に適する、再生計画案の作成見込みが無いことが明らかといった事情が無い限り開始決定がなされます(33条1項、25条)。
(2)財産状況報告
再生手続開始後遅滞なく、債務者は最低手続きにいたった事情、財務財産に関する経過や現状などを記載した書面を裁判所に提出することとなります(125条1項)。これまでの経緯や今後の見通しなどを記載した報告書に、財産目録や貸借対照表、債権認否書(101条)等を添付することとなります。
(3)再生計画案の提出
再生債務者等は債権届け出期間満了後裁判所の定める期間内に再生計画案を作成して提出することとなります(163条1項)。再生計画案とは、債務をどの程度減額させるか、また今後各債権者にどのように返済していくかを記載した書面です。これが提出されると裁判所の決定により債権者による決議に付されることとなります(169条1項)。通常は債権者集会で決議が採られ、債権者の頭数の過半数の同意と議決権額の2分の1以上を有する者の同意で可決となります(172条の3)。可決された再生計画は問題がなければ裁判所によって認可されます(174条)。
(4)再生計画の遂行と終結
再生計画が確定したら再生債務者は監督委員の監督に復しつつ、再生計画に従い各債権者に返済していくこととなります。計画に従って返済が完了するか、再生計画認可から3年経過したら再生手続は終結となります(188条2項)。
会社更生
再建型の法的整理には民事再生の他に会社更生があります。会社更生はその対象が株式会社のみとなっており個人や持分会社は対象外となっております。また会社更生では原則として現経営陣は退陣し更生管財人が代わりに経営することとなります。また原則として100%減資がなされることから既存の株主は権利を喪失することとなります。
コメント
本件でビスタホテルマネジメントは東京地裁により3月11日に民事再生手続き開始決定を受け、同日保全・監督命令も受けました。今後財産評定や再生計画案の提出が行われていくことが予想されます。以上のように債務超過など経済的に窮地に陥り破産に至る可能性がある場合には民事再生手続きを利用することができます。会社更生手続とは違い現経営陣による経営を継続でき、また費用も抑えられるメリットがあります。昨今の新型コロナウイルスにより経営状況が急速に悪化している会社は増加の一途をたどっております。破産に至るまでにどのような手続きを利用できるかを予め把握し、備えておくことが重要と言えるでしょう。
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