3月1日施行、改正会社法の概要について
2021/03/19 商事法務, 法改正対応, 会社法, その他

はじめに
令和元年12月4日に成立し、同月11日に公布された改正会社法が先日3月1日に施行されました。平成17年に制定され、平成26年に改正されて以来2度目の改正となります。今回は3月1日施行の改正法の概要について見直していきます。
取締役等に関する規定の見直し
(1)報酬に関する規律
今回の改正では、取締役に関する規定の見直しが大きな改正ポイントと言えます。まず報酬に関して指名委員会等設置会社以外の上場会社等は取締役の個人別の報酬内容について、定款または株主総会決議で具体的に定められていない場合、取締役会で個人別報酬の決定方針を決定することが義務付けられます(361条7項)。これまで同様取締役の個人別報酬の内容の開示までは不要ですが決定方針は定める必要があるということです。
(2)役員の責任の補償等に関する規律
取締役等の職務執行に関して会社や第三者に対する責任追求を受けた際に負担することとなる対応費用の全部または一部を会社が補償する契約(補償契約)についての規定が新設されます(430条の2第1項)。役員等が任務懈怠責任などを追求されるというリスクを会社が一定の範囲で補償することは従来利益相反の観点からも不透明でしたが、今回明文化されております。補償契約では会社への賠償責任そのものを肩代わりすることはできず、また契約締結には取締役会の承認を要するなどのルールが新設されております。また役員賠償責任保険(D&O保険)に関する規定も新設されております(430条の3)。
(3)社外取締役
これまでも証券取引所等で定めるコーポレートガバナンス・コードにより義務付けられておりました社外取締役の設置について、会社法でも上場会社等に設置を義務付けることとなりました(327条の2)。またマネジメント・バイアウトや親子会社間での取引で利益相反等が生じる場合に業務執行を社外取締役に委託しても社外性が失われないこととなりました。
株主総会に関する規制の見直し
(1)株主総会資料の電子提供
本来書面で株主に送付すべき株主総会の資料を定款で定めることによりインターネット上で提供することができるようになりました(325条の2)。これにより招集通知に書面の添付をせず、URLを記載すれば足りることとなります。これら株主総会資料は株主総会の3週間前の日または招集通知を発した日のいずれか早い日からウェブサイトに掲載する必要があります。これにより印刷や郵送のコストを削減できるようになります。
(2)濫用的株主提案の制限
一定の株主比率を満たす株主は会社に対し株主総会での議案の要領を招集通知に記載するよう求めることができますが、今回の改正により1回の株主総会で請求できる議案数が10件までに制限されることとなりました(305条4項)。従来この株主提案権を利用して1人の株主から100件を超える議案が提出されるなど濫用的な提案がなされる弊害が指摘されてきましたが、今回の改正で抑制されることとなります。
その他の改正点
上記以外にも今回の改正では様々な変更が加えられております。まず社債について一定の要件のもと社債管理者を置かなくてもいい場合に社債管理補助者の設置が可能となります(714条の2)。また株主総会と同様に社債権者全員が書面で同意すれば集会を開催しなくても決議ができるようになります(735条の2第1項)。そして役員等の責任追及訴訟に関して、会社と役員等が和解する際には監査役等の同意が必要となっております(849条の2)。成年被後見人、被保佐人も法定代理人の承諾があれば取締役等に就任が可能となります(331条の2第1項、2項)。
コメント
平成26年改正時でも指摘されていたガバナンスの強化や株主提案等に関する問題点について今回の改正で見なおされた形となっております。特に大きいのは取締役に関する規制で、その中でも報酬委員会のある指名委員会等設置会社以外の上場会社に個人別報酬の決定方針を定める義務が新設された点と言えます。近年大企業の不祥事等を受けて株主や投資家からも取締役の報酬が不透明と指摘されておりました。それを受け今回の改正で具体的な報酬額までは不開示のままですが、ある程度の透明性が図られたと言えます。また支店を置いている場合、支店所在地でも登記が必要ですが、今回の改正で廃止されます。施行日は来年の予定です。以上のように今回の改正は26年改正同様かなりの規模になっております。正確に改正点を把握しておくことが重要と言えるでしょう。
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