ベッド柵に挟まり男児死亡で提訴、製造物責任について
2021/02/17   コンプライアンス, 製造物責任法, その他

はじめに

ベッドに取り付けた転落防止柵とマットレスの間に挟まった生後9ヶ月の乳児が死亡したのは転落防止柵の欠陥が原因であるとして両親が製造メーカーに対し計約9300万円の損害賠償を求め提訴していたことがわかりました。今回の約1ヶ月後にも同様の事故が発生していたとのことです。今回は製造物責任について見直していきます。

事案の概要

 報道などによりますと、死亡した乳児は平成29年8月、世田谷区の自宅でベビー用品メーカー「カトージ」(愛知県)製のベッドガードを装着した大人用ベッドで寝ていた際、ベッドガードとマットレスの隙間に転落し搬送先の病院で死亡が確認されたとされます。原告側は同製品の取扱説明書には「生後18ヶ月から5歳くらい」の子供に使用するよう記載があったが具体的な危険性が示されておらず警告表示も不十分としています。乳児は生後9ヶ月で母親が別の子供を世話していた約2時間半の間に挟まったとみられております。

製造物責任とは

 製造物に欠陥があり、それにより消費者に損害が生じた場合、小売店に対して契約不適合などで債務不履行責任を追求しても責任の範囲はその製品の代金程度にとどまり、また直接の契約関係にないメーカーを訴えても、不法行為責任(民法709条)によるほかなく、メーカー側の過失や損害などの立証を要し、責任追及は困難でした。そこでメーカー側に製品について無過失責任を負わせ、製品に欠陥があり、それにより損害が生じた場合にはその賠償をする義務を負わせることとなりました。

製造物責任の要件

 製造物責任法3条によりますと、製造業者等はその製造、加工、輸入または製品に自らの氏名や商号等を表示したり実質的に製造業者と認めることができる場合であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体または財産を侵害したときはその損害を賠償する責めに任ずるとしております。対象となる製造物とは「製造または加工された動産」を言うとされ建物等の不動産は含まず、またソフトウェアやプログラムも含まれないとされます。そしてここに言う「欠陥」とは「製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう」とされております(2条2項)。その判断にあたっては、当該製造物の特性、通常予見される使用形態、製造物を引き渡した時期、その他の事情を考慮するとされております。その他の事情とは行政上の安全基準等が該当するとされます。一般に欠陥とは設計段階における安全配慮不足、粗悪な材料や設計・仕様どおりに作られていないなどの製造過程での欠陥、消費者への適切な指示・警告不足による欠陥に分けられると言われております。

免責事由等

 上記の製造物に欠陥があった場合でもメーカー側が、当該製品を引き渡した時における科学または技術に関する知見によっては欠陥を認識することができなかったこと、または自社の製造物が他の製造業者の製造物の部品や原材料として使用された場合、その製造物の製造業者の設計に関する指示に従ったことにより欠陥が生じ、かつ過失がないことを証明した場合には免責されます(4条1号、2号)。たとえば親事業者から指示された仕様や規格に従って下請け業者が部品等を製造した場合が典型例と言えます。また製造物責任には期間制限があり、被害者が損害と賠償義務者を知ったときから3年(生命または身体損害の場合は5年)、製造物を引き渡した時から10年で時効消滅するとされます(5条1項、2項)。なお健康被害が出るまでに潜伏期間がある等の場合はその損害が生じた時から10年となります。

コメント

 本件で原告側は、使用されたベッドガードは隙間への転落事故を誘発しやすく製造上または設計上の欠陥がある、使用上の指示・警告表示がなく、説明書の注意表示も不十分であり指示・警告上の欠陥があるとしております。今後は主に設計上および注意表示に欠陥がなかったかが争点となってくるものと思われます。以上のように製造物責任法では消費者保護のため欠陥の存在を立証すればメーカー側の過失等を証明しなくても賠償責任が生じるようになっております。どのような場合に欠陥となるのか、またどのような場合に免責されるのかを正確に把握し、自社製品の製造過程や説明書等に不十分な点は無いかを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。

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