三井不動産が東京ドームへのTOB成立、株式公開買い付けについて
2021/01/21 商事法務, 戦略法務, M&A, 会社法, 金融商品取引法, その他
はじめに
三井不動産は19日、東京ドームに対する株式公開買い付け(TOB)で約85%の応募が集まり成立したと発表しました。今後は完全子会社化を経て施設の再整備を目指すとのことです。今回は株式公開買い付けについて見直して行きます。
事案の概要
報道などによりますと、三井不動産は昨年11月30日から今年1月18日まで東京ドーム株式に対し株式公開買い付けを実施しておりました。買付価格は1株1300円で買付予定数は約9300万株、買付予定数の下限は約6200万株とされ、今回の実施により約7800万株の応募がありTOBが成立したとのことです。今後は同社を完全子会社化した後、株式の20%を読売新聞社に譲渡して業務資本提携を結び東京都文京区一体の商業施設などの再整備事業に乗り出す予定とされます。なお東京ドーム株は上場廃止となる見通しです。
株式公開買い付けとは
株式公開買い付け(TOB)とは、会社の株式を証券市場外で一定期間のうちに一定価格で買い取ることを公告して取得する手法を言います。子会社化や企業買収、マネジメント・バイアウト等に利用され、成立した場合には上場廃止となる場合が多いとされます。日本では金商法によって有価証券報告書の提出が義務付けられている会社の株式を第三者が市場外で一定数以上買い付ける場合にはこのTOBによることが義務付けられております。これは経営権の移転の可能性について広く情報開示し、また株主に平等に売却の機会を与えるためとも言われております。
株式公開買い付けの手続き
株式公開買い付け(TOB)を行う場合にはまず公開買付公告を行う必要があります(金商法27条の3)。そして公開買付届出書を内閣総理大臣に提出します。公告が行われたら対象となっている株式を発行している会社はその日から10営業日以内に意見表明報告書を内閣総理大臣に提出します(27条の10)。これにより当該TOBの性質が明らかとなります。この意見表明報告書で当該TOBについて質問が記載された場合にはTOBを行う会社は5営業日以内に内閣総理大臣にその回答を提出する必要があります。TOBが終了したら公開買付報告書を提出し完了となります。なおTOBは一度開始すると原則として撤回することはできません。しかし会社の倒産や組織再編、災害など一定の重大な支障が生じた場合には公開買付撤回届出書を提出して撤回することができます(27条の11但し書き)。
株主側の対応
TOBが開始された場合、対象となる株式を保有している株主はどのように対応するかを決定する必要があります。TOBに応募してその手続で売却すること、TOBの手続きに従わず通常の株式市場で売却すること、そのまま保有し続けることの3通りの対応が考えられます。通常TOBの際には市場価格よりも高い買取価格が設定されます、しかし一方で株式市場もTOBに伴って株価は上昇する傾向にあります。また売却せずに保有し続ける場合でもTOB成立後はほとんどの場合上場廃止となって市場で売却することができなくなり、さらにTOB実施会社によって株式を取得されてしまうことも考えられます。それらを踏まえて対応する必要があります。
コメント
三井不動産の今回のTOBで東京ドーム株を議決権割合にして約84.8%取得することができたとされます。今後残りの株式を取得して100%子会社とする予定とされます。どのような手法によるかはまだ不明ですが、全部取得条項付種類株式に変更して取得する方法、三井不動産以外の株主の株式数が1株未満になる併合比率による株式併合を利用する手法などが考えられます。なお90%以上取得することができていた場合は特別支配株主による株式売渡請求が利用可能です。以上のようにM&Aによって完全子会社化を目指す場合、まずTOBによって株式を広く買い付けていくことが一般的です。そのTOBによってどの程度取得できたかによりその後の手続きも変わってきます。M&Aを検討している場合はそれぞれの手続きの流れを把握して今後の流れを予測していくことが重要と言えるでしょう。
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