3分の1以上が社外取締役、コーポレートガバナンス・コード改訂の動き
2020/12/10 商事法務, コンプライアンス, 会社法, その他

はじめに
金融庁の有識者会議は8日、コーポレートガバナンス・コード見直しに向けた提言を取りまとめていたことがわかりました。東証再編後、上場会社には取締役会の3分の1以上を社外取締役にすることが求められるとのことです。今回はコーポレートガバナンス・コード改定の動きを見ていきます。
コーポレードガバナンス・コードとは
コーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)とは、上場企業のあるべき透明で公正かつ迅速な意思決定を行うための仕組みであるコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものを言います。2015年に策定され、2018年に一度改定されております。その内容は多岐にわたりますが大きく、①株主の権利・平等性の確保、②株主以外のステークホルダーとの適切な協働、③適切な情報開示と透明性の確保、④取締役会等の責務、⑤株主との対話となっております。コーポレートガバナンス・コードは法律とは異なり法的拘束力はもっておりません。そのため上場会社は必ずしも全てを遵守することが求められているわけではありません。それぞれの会社の実情や個性に応じて異なる扱いをすることも可能です。ただしその場合はその理由を説明が求められることとなります。
2018年の改訂点
2018年の改訂では主に次のような変更が加えられております。まず政策保有株式について、その縮減に関する方針の開示、取締役会での保有目的や便益、コストなどの精査と検証の開示、政策保有株式に係る議決権行使の対応基準の開示などが挙げられます。そして経営幹部の選解任について客観性・透明性のある手続きの確保とその手続に従ったCEOの選任が求められ、また役員報酬についても同様に客観性と透明性のある手続きが求められております。十分な人数の独立社外取締役の確保と各種委員会などの独立した諮問委員会の設置なども盛り込まれております。
現在の改訂案
今年7月に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」ではコーポレートガバナンス・コードの改訂案として、①資本コストを踏まえた経営のさらなる推進、②上場子会社の扱いの適正化を含むグループガバナンス強化、③監査の信頼性の確保、④中長期的な持続可能性についての考慮、⑤社外取締役の質の向上などが挙げられております。この中でも特に社外取締役については独立性を維持しつつ、経営陣と支配株主との利益相反の監督や少数株主をはじめとするステークホルダーの意見の経営への反映などが期待されております。
コメント
共同通信の報道によりますと、2022年春に予定されている東証市場の再編後、最上位市場に上場する企業には取締役会のメンバーの3分の1以上が社外取締役であることが求められる見通しとされます。これは2018年改訂では見送られた案で、近年上場会社にはより透明性の高いガバナンスが求められていることの現れであると考えられます。これまでも取り上げてきたように、会社法上社外取締役が求められるのは特別取締役による議決の定めを置いている場合、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社の3つに限られております。その点を踏まえれば今回の改訂はかなり上場会社に負担の大きいものとなっております。すでに東証一部に上場している場合や、今後東証の最上位市場を目指す場合には社外取締役の確保について早めに検討を始めることが重要と言えるでしょう。
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