公取委が「さとふる」に勧告、転嫁特措法の買いたたきについて
2020/07/02 コンプライアンス, 民法・商法, その他
はじめに
公正取引委員会は26日、ふるさと納税仲介大手「さとふる」(東京都)に対し消費税転嫁対策特別措置法に違反するとして再発防止の勧告を行っていたことがわかりました。「買いたたき」行為があったとのことです。今回は転嫁特措法の規制を見直していきます。
事案の概要
公取委の発表などによりますと、ふるさと納税ポータルサイトの企画運営を営む「さとふる」は自治体等と業務委託契約を締結し、ふるさと納税を行った個人に対し自治体等の返礼品に関する業務を行っているとされます。同社は返礼品提供事業者からの納入を受けるに際し、返礼品の単価を消費税を含む額で定めており、一部提供事業者に対しては増税後の消費税率引き上げ分を上乗せせずに増税前の単価で代金を支払っていたとのことです。同社は公取委による調査を受け、既に引き上げ分相当額を支払い済みとされます。
転嫁特措法による規制
消費税が増税され、商品の購入価格が上がれば消費者の購入意欲は減退します。そこで増税後も価格を据え置いて、納入業者に支払う購入代金も従来のまま増税分を値上げせず支払うといった行為は転嫁特措法によって禁止されております。消費増税分は適切に商品に転嫁され、最終的に消費者が負担するべきだからです。そこで一定の要件を満たす事業者はこの趣旨に反するいくつかの行為が禁止されることとなります。以下具体的に要件を見ていきます。
転嫁特措法の適用要件
転嫁特措法が適用される「特定事業者」とは、①大規模小売事業者、②特定供給事業者から継続して商品又は役務の提供を受ける法人事業者となります(2条1項1号、2号)。大規模小売事業者とは、一般消費者が日常的に使用する商品の小売業者であって売上高が100億円以上である事業者等を言います。そしてその特定事業者と取引する「特定供給事業者」とは、①大規模小売事業者に継続して商品又は役務を供給する事業者、②資本金等の額が3億円以下である事業者、③個人事業者となります(同2号)。買いたたき等の行為は立場の強い小売事業者等が納入業者等に対して行う行為だからです。
禁止行為
転嫁特措法3条では①減額、②買いたたき、③利益提供の要請、④本体価格での交渉拒否、⑤報復行為が禁止されております。減額とは消費増税分を事後的に減額して支払うことを言います。買いたたきとは合理的理由なく通常より低い価格で代金を支払うことを言います。増税後も増税前の価格に据え置くことが典型例と言えます。増税分の代金値上げを認める代わりに役務や経済上の利益提供を要求したり、商品等を購入させる行為が利益提供の要請に当たります。納入業者が税抜の本体価格での交渉を申し出ている場合に、税込み価格での交渉しか応じないとった行為も禁止されます。そしてこれらの行為について公取委等に通報したことを理由とする不利益取扱も禁止されております。
コメント
公取委の発表によりますと、さとふるは返礼品納入業者に対し消費増税後も引き上げ分を上乗せせずに増税前の価格に据え置いて代金を支払っていたとされます。公取委は同社に対し今後消費税の転嫁を拒否しないよう社内に周知徹底、体制整備、相手事業者に通知すること等の勧告を出しております。以上のように一定の事業者は納入業者への代金に適切に消費増税分を上乗せすることが求められております。なお転嫁特措法は来年令和3年3月31までとなっており、以後は失効することとなります。しかし現在公取委転嫁拒否行為の監視を強化しており納入業者への聞き取り調査や小売事業者への立入検査などを実施しているとのことです。買いたたきや減額を行っていないかを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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