芦屋市が沖電気を提訴、入札談合について
2020/06/10 コンプライアンス, 独禁法対応, 独占禁止法

はじめに
兵庫県芦屋市は8日、消防用デジタル無線の導入に際し入札談合があったとして、納入業者である沖電気工業(港区)に対し損害賠償を求め提訴していたことがわかりました。2017年に公取委から談合の指摘があったとのことです今回は独禁法上の入札談合について見直します。
事案の概要
報道などによりますと、全国の自治体が発注した消防救急デジタル無線の入札に際して、富士通ゼネラル、沖電気、NEC、日立国際電気、日本無線の5社が談合を繰り返していたとして2017年に公取委から排除措置命令、課徴金納付命令を受けておりました。5社は遅くとも2009年12月頃までに受注価格低落を防止するために納入予定メーカーを決定する、それ以外のメーカーは納入予定メーカーが納入できるよう協力するという旨の合意をし、営業部長級の者が参加する会合を毎月開催していたとされます。そこで話し合いにより納入予定メーカーを決定し、実際に落札していたとのことです。
不当な取引制限とは
独禁法2条6項によりますと、事業者が他の事業者と共同して、対価を決定し、維持し、もしくは引き上げ、または数量、技術、製品、設備もしくは取引の相手方を制限する等、相互にその事業活動を拘束し、または遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することを不当な取引制限として禁止しております(3条後段)。違反した場合には排除措置命令(7条)、課徴金納付命令(7条の2)の対象となり、また罰則として5年以下の懲役、500万円以下の罰金、法人には5億円以下の罰金が規定されております(89条1項1号、95条1項1号)。また民事上の賠償責任も生じることがあります(25条、民法709条)。
不当な取引制限の要件
不当な取引制限の具体的な要件は「意思の連絡」と「相互拘束」と言われております。意思の連絡は黙示的な合意でよく、たとえば業者間の暗黙の了解で価格を引き上げるといった場合でも該当します。明確な合意がなくとも相手方が値上げするであることを認識し、それを容認しているだけで成立することもあります。相互拘束とは意思の連絡を通じて互いの行動を調整し合う関係が全体として成立していればよいと言われております。
入札談合の場合
上記のように不当な取引制限は「意思の連絡」と「相互拘束」によって成立するとされておりますが、入札談合の場合は「基本合意」と「個別調整行為」があれば要件に該当すると言われております。基本合意とは、受注者や入札価格を業者間で決め、受注者以外の業者は受注者が落札できるよう協力するといった合意を言います。そして個別調整行為とは、その基本合意に基づいて具体的に受注者を決め、他の業者が協力する行為を言います。基本合意には話し合いや輪番制、シェア制などがあると言われております。
コメント
公取委の発表によりますと、本件で5社は2009年の12月頃には納入予定メーカーを決定する、それ以外の業者は落札できるよう協力するという旨の合意ができていたとされます。これは基本合意に該当します。そしてそれに基づき既設の状況、営業活動の状況などを考慮して納入業者を決定していたとされます。これは個別調整行為に該当すると言えます。以上のように談合、カルテルなどの不当な取引制限は明確な合意がなくても一定の客観的な事実があれば意思の連絡が推認されるなど、一般に考えられているよりも認定されやすいと言えます。ただライバル業者同士で腹のさぐりあいをしていただけと思っていても、相手業者が値上げするであろうと認識し、それに合わせて値上げした場合には該当するといったことがあります。営業担当が競業他社と会合や話し合い、探り合いなどを行っていないか、今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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